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第203回 子どもの成長に必要な人間関係

2021年2月3日

 今回と次回の通信は、コロナ禍もふまえて、子どもの成長を支える人間関係について改めて考えたいと思います。

 長期化するコロナ危機の中で、学校教育の現場もかつてない困難に直面してきました。一方ではコロナ以前からあった課題がより明確になり、危機に向き合う学校の取り組みが新たな日常をより充実させる方向につながることもありました。例えばオンラインの授業や会議が広く導入されたことも、新たな便利さや可能性を広げてくれたのです。
 
 同時にコロナ危機のもとで長期の臨時休校や変則的な登校生活を経る中で、「学校教育の存在意義」についてもう一度再認識させられる機会が訪れました。
 教室において教員と生徒・児童・園児が直接に向き合えることの有難さや、対面の授業において伝えられて語り合える有難さを実感しました。感染予防対策を話し合い、皆で工夫して学校行事などを実現できた経験も貴重なものになりました。
 
 子どもは本来、幾重もの人間関係の中で育っていきます。通常まず土台になるのは親子関係であり、親から愛情のこもった毎日の世話を受け、子どもは心の基地に恵まれて世界を広げていきます。他の成人との関わりも入ってきて大人への信頼感が育ちます。

 そして幼稚園、保育園や近隣社会で、同年代や同世代の子どもとの関わりが重要になっていきます。ともに工夫して遊ぶ生活の中で、相手の気持ちに気づいたり助け合ったり、自分の欲求を我慢して行動できる力も養われていくのです。
 小学校では学びの体験や周りの対人関係が一気に広がります。親や学校の先生とは「タテの関係」であり、同学年の友だちとは「ヨコの関係」ですが、兄弟姉妹や異学年との「タテの関係」もしっかりと自覚されます。それぞれの関係がつながり合って子どもの社会性が育まれていくのです。

 湘南学園幼稚園では、特に年長児は日頃から年中児や年少児のお世話やサポートをする機会に恵まれ、全園のリーダーとして成長していきます。
 湘南学園小学校では、入学から卒業まで全校のたてわり活動や6年生&1年生のペア活動が大事にされ、校外行事や楽しいイベントに結実されています。

 小学校高学年から中学高校へかけては、「思春期」と総称される難しく重要な時期を迎えます。同年代との交友関係が重要性を増して子どもの中で優先されます。中高の部活動はタテの人間関係も一気に広げます。先輩にあこがれて同輩と切磋琢磨し、逆に後輩を支え育てることで成長する経験も貴重です。実力や技能、メンバーシップとリーダーシップを培うのです。そして湘南学園中高では異学年の協働で主体的に学校行事を創り上げる体験を重視しています。学校としての伝統が厚い教育力につながるのです。
 
 思春期の世代には、更に「ナナメの関係」を豊かにしていくことが期待されます。家庭や学校の限られた人間関係ではコミュニケーションが行き詰まり、対人関係や進路などの悩みを解決する手立てが見えないことがあります。SNSの浸透が対人ストレスや疎外感を深める事態も深刻です。「同調圧力」の強い日本社会に特有な状況があります。

 出口の見えない絶望や孤独に直面している時、第三者的な視点からのアドバイスやサポートに恵まれる機会があると、大きなヒントを得て心が軽くなることがあるものです。次回は続けてそうした「ナナメの関係」の大切さを主題にしたいと思います。