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第208回 東日本大震災から10年間を経て

2021年3月10日

 東日本大震災の勃発から、明日でちょうど10年間が経つことになります。当時の本学の体験を改めて振り返り、今後への自覚を新たにしたいと思います。
 
 年度末の時期で、中高生は部活動などで300名近くが登校した日でした。困難の深まる中でも多数の保護者のお迎えをいただきましたが、100名以上の生徒達が教職員と共に校舎内で夜を過ごしました。小学校でも真夜中までかかって保護者のお迎えをいただき、児童達の全員が帰宅することができました。
 大津波警報の発令を受けて湘南学園へ避難され、共に夜を過ごされた地域住民の方々も大勢おられました。東北地方を中心に全国の惨状が刻々と報道され、不安の深まる一夜を過ごしました。皆で支え合って乗り切っていこうと先輩達のリードで声をかけ合っていた中高生達の姿が心に残っています。

 そしてPTAのリーダーの方々が圧倒的なご協力を寄せてくださいました。近隣の多数のお店へ食料や必要物資の買い出しで奔走され、早朝まで夜通しで炊き出しなどで奮闘してくださり、おにぎりや味噌汁の用意、住民の方々への対応でご尽力をいただきました。また多数の保護者の方々から来園時の差し入れや援助のお申し出でお力添えをいただきました。翌朝JRと小田急線の復旧を受けて藤沢駅まで集団下校を行い、生徒諸君は無事にご家庭へ帰宅できました。

 その後も事態は厳しく、「計画停電」の実施に伴う市民生活の大混乱があり、通常の学校運営は困難となりました。県内私立学校間の情報交換を進めながら、学園生の安全確保を最優先して年度末予定の大幅な変更を行い、HPやメール配信でご連絡しました。
 
 新年度に入り、被災者支援の義援金募集を「チーム湘南学園」で取り組みました。被災地域の事実に目を向け、援助や復興で懸命の活動を続ける人びとの姿に学ぶ日々でした。私達の生活が広範な社会の人達に支えられていることを感謝とともに自覚する毎日でした。 
 学園でも防災体制が強化され、各パートと全学で備蓄の補充、放射能測定や津波想定の避難訓練を行い、周辺自治会の方々との「防災・防犯」をめぐる協力体制や対話が前進しました。夏期や年間を通した節電対策も意識され、数値結果が検証されました。

 当時の切実な課題意識に比べて風化が指摘できる現状を反省します。全世界で推進すべきSDGsの達成へも向けて、当時の経験を振り返り努力していく必要があります。

 東北地方の被災地を研修旅行で見学した高校生が、学園生や教職員、近隣住民の方々に自分達の経験と思いを伝えたいと報告会を開催してくれました。
 その後も集中豪雨や大地震に直撃された全国の地域を訪問した生徒会の諸君が、「当事者意識」の共有を訴えて学内や学外で報告会を開催してくれました。
 
 この間ずっと日本では深刻な異常気象や自然災害が多発してきました。「何十年に一度」の記録的な災害が続くほどの情勢は、地球環境に深まる危機を反映しています。
 そしてこの1年間、コロナ禍のもとで、日常生活も経済活動もかつてない深刻な情勢に向き合ってきました。多数の人達が犠牲になられ、誰もが感染不安を抱えながら暮らしてきたのです。

 東日本大震災の経験や「災害列島」と呼べる被害の多発、そしてコロナ危機に直面してきた経験。それらも全て糧にして、今後の社会を築いていく努力が求められています。
 人びとの生命と生活を守るために大勢の人達が懸命に働いておられること。世の中は様々な仕事が網の目のようにつながって成立していること。同じ社会と時代に生きる同胞として連帯や協力を広げていくべきこと。そうした認識を皆で深めながら、大人は子どもの声や願いや提案をしっかり受けとめ、身近に出来る努力から共々に実行していきたいものです。