紙風船

2012年10月17日

若い頃黒田三郎さんの詩を読むと、「この人はもしかしたら私の代わりに身を削って詩を書いてくれているのではないか」と思ったことがあります。黒田さんの作品の中でも「紙風船」は歌にもなったり、教科書にもなったりで、もっとも有名な作品ですが、私は最近までこの詩の良さが、黒田さんの他の作品と比較してよくわかりませんでした。「ああ、まさにこの詩は、人生への思いをうたったものなのだ」と思うようになったのはつい最近で、私はあと何回紙風船を打ち上げられるのだろうかと、思うようになってからです。運動場に遊ぶこどもたちは、今日も明日も、無心に紙風船を打ち上げています。

『紙風船』   黒田三郎

落ちてきたら

今度は

もっと高く

もっともっと高く

何度でも

打ち上げよう 

美しい

願いごとのように

 

詩集「もっと高く」所収
「現代詩文庫」思潮社