教育内容

 私たちは公教育を担う小学校として社会における責務を果たすとともに、私立小学校として教育観を共有する保護者の方と共に、子どもたち一人ひとりを大切にする教育活動を実践していきたいと考えています。そのために大正デモクラシー期の新教育運動*1の思想を汲む学校として、湘南学園らしいユニークな教育活動に取り組んでいます。

 
教科の本質と学び合いを大切にした授業

 昨今、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着ということが言われています。いわゆるゆとり教育の時期において、OECDのPISA調査*2という学力調査で日本の順位や点数が下がったことが背景にあります。このような各教科の基礎的・基本的な知識・技能を子ども達はどのように学ぶべきなのでしょうか。たくさんドリルに取り組めばよいのでしょうか。

 私たちはそれは違うと考えています。教科の基礎的・基本的な知識・技能は「教科の本質を学ぶ学習」でこそ身につくと考えています。

 例えば算数を例にとってみます。
 なぜ分数のわり算は逆数をかけるのでしょうか?
 どうして円の面積は半径×半径×3.14で求めるのでしょうか?
 湘南学園ではこうした疑問を大切にし、教科の本質にとことんこだわった学習を進めていきます。

 1年生の算数では数の概念をしっかり身につけられるよう、タイルなど具体物を使いながら、スモールステップで学習していきます。基礎の習得にじっくりと時間をかけていくことで、子どもたちの数量、数字についての認識がしっかりしたものになります。低学年にこうした基礎学習があるからこそ、中学年以降の内容の濃い学習や抽象的な思考が必要な学習にもスムーズにつなげていくことができるのです。

 1年生の国語は、実物に触れたり、歌ったり、体を動かしながら学び、言葉の響きと文字を丁寧につなげていきます。正しい姿勢や鉛筆の持ち方の学習から始まり、文字指導に時間をかけてじっくり行います。また様々な物語に、読み聞かせや日本語文法を生かした読解を通じて親しみます。

 漢字の学習ではその成り立ちについての話をしながら、一つずつ丁寧に学んでいきます。漢字それぞれには生まれた背景があって、それらの形や音には歴史があります。そのようなことを繰り返し学習すると、漢字により親しみを覚えて使いたくなるものです。もちろん繰り返しの練習も必要ですので、励ましながら学習をサポートします。

 このように本質を学ぶことで、物事を自分自身で発展的に考えるようになり、必要な場面で必要な知識を活用することや表現することができるようになるのです。

 授業は、はじめの一歩から丁寧な取り組みを行います。また子ども同士の教え合いや議論、共同作業など「学び合い」を通して、子どもたち全員がわかり、できるようになることを大切にします。

 質の高い授業を行うため、体育・音楽・図工・英語などの教科は専門的に学んだ専科教諭が担当します。

 行事も担任と専科教諭が力を合わせ一つずつ丁寧に実施しています。合唱を楽しむ音楽会、民舞を踊るたいいく表現まつり、図工の作品を鑑賞しあう制作展など子どもたちがとても楽しみにしている行事があり、音楽・体育・図工、それぞれの教科学習における本質を感じとる機会となっています。



探求的な学びで問題解決力を育む総合学習

 教科の学習で身につけた力を、生活科や総合学習における探求活動と結びつけることで、問題解決能力を育てます。これからの社会は、自ら問いを立て、調べたり考えたりして、行動するということが求められるでしょう。身近な生活の中からテーマを追求する生活科や総合学習の活動によって、子どもたち一人ひとりの基礎的な学力を土台とした、思考力、判断力、表現力を伸ばしていきます。また教科と関連させた活動は、子どもたちの興味関心を育てることにもつながります。

 宿泊体験学習は3年生から6年生まで、各学年で1回ずつ実施しています。3年生は「海の学校」、4年生は「山の学校」、5年生「雪の学校」、6年生「修学旅行」と名前がついています。宿泊体験学習を中心に総合学習では学年ごとにテーマを設定し、学習活動をデザインしています。

 例えば3年生の「海の学校」では、”海””海岸””砂浜”というフィールドで自然を楽しみ、人との素晴らしい出会いがあるよう、入念な計画を立てます。また体験をするだけで終わりにならないよう、海の生き物のことを図鑑から調べるなど事前指導や事後のまとめなどを大切にし、子どもたちの中に価値ある経験として残るよう考えています。

 学校という共同空間だからこそできる活動には大きな意味があります。友だちや周りの人々とつながりながら協力して一つのことをやり遂げていく力は、現在の社会において求められる「共同で課題を解決していく態度」を育むことにつながります。



子どもたちが子どもらしく生活できる場所

 子どもたちが自分の力を発揮し、成長するためには、安心して生活できる場所が必要です。楽しいことも悲しいことも共有できる友達、困ったときには助けてくれる先生、安全に配慮された校舎がそろった小学校で、6年間を過ごしてほしいと考えています。そのような学校を実現させるためには、まず学級づくりが重要です。それぞれの担任が創意工夫をこらしながら学級運営をおこなっています。また自分と友達の命と健康の大切さに気づかせながら、他者を尊重する態度を養います。たてわり班による児童会活動は異なる学年の子との関係をもつ絶好の機会です。

 子どもたちは大人とは違う感性をもち、力強い表現をすることができます。たいいく表現まつり、音楽会、制作展という行事はまさしくその力を発揮する機会となります。

 新校舎は安全に配慮され、様々な学習のスタイルに対応できるよう考えられて造られました。学校を上げてのエコスクール活動では、一人ひとりが自分なりの方法で環境について学んでいます。

 高学年ではクラブ活動や、委員会活動にも熱心に取り組みます。




 

*1大正デモクラシー期の新教育運動(大正自由教育運動とよばれる)
大正時期に起こった教育についての運動です。明治期に急進的な近代化や西欧化を進めるために行われていた画一的な教授を中心とした指導を改め、子どもの感じ方や考え方を大切にするとともに、子どもたちの個性を伸長するような教育を目指す考え方です。また教師一人ひとりが子どもたちのために創意工夫をほどこした教育を目指すものでした。

*2OECDのPISA調査
経済協力開発機構(OECD)の参加国が共同して国際的に開発し、実施している15歳児を対象とする学習到達度調査です。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について調査を行っています。これまでの学力調査と違い、これからの情報社会に求められる学力の到達度をはかろうとしています。