2018山の学校No.4
山の学校2日目は、薄曇りのお天気でスタート。湖畔の広場でクラスごとにあいさつをしたり、今日のスケジュールや目標を確認したり、体操をしたりして、それぞれに朝の空気を胸いっぱい吸い込みました。集合写真を撮って朝ご飯をいただいた後は、昨日もお世話になった富士山クラブの皆さんと再会して、樹海トレッキングに向かいました。
コウモリ穴洞穴からスタートするチームと、根場(ねんば)浜からスタートするチームに分かれました。根場浜は、50年ほど前の台風による土砂災害で、大きな被害があったそうです。川沿いは新たな土砂災害を防ぐための整備がされています。うっすらともやのかかった富士山を眺めながら、昨日も解説してもらったゴツゴツした溶岩の見える湖畔から樹海の森へと入っていきました。
それぞれのグループ付きのガイドさんによって、子どもたちが興味をもちやすいように、さまざまな工夫をしてくれていました。このグループのガイドさんは、「きのこ」「2㎝のまつぼっくり」「キリンの模様の木の幹」など、課題の書かれたカードを子どもたちに手渡して、歩きながら見つけてごらん、と声をかけながら歩き始めました。すると、「あ!きのこミッケ!」「ガイドさーん、まつぼっくりがあった!」「ねえねえ、これ見て」と、次々と発見の報告が寄せられます。なんとなく歩いているだけでは見過ごしてしまう自然の不思議に気づける「眼」を、こうしたきっかけで子どもたちは獲得していくのがわかりました。
ガイドさんに教えられる前に、「あ!これ、きのうの山で咲いてた花だ!」と気づいた子がいました。
地中からニョッキリ顔を出した白い植物、「ギンリョウソウ」(銀竜草)です。ガイドさんから、「おお、よく見つけたなー。」と褒められていました。
鹿の食害にあって、樹皮が食べられてしまったために立ち枯れている樹木も、「あ、これもそうかな?」と子どもたちが見つけ始めました。
リスが食べた後の松ぼっくりの芯(エビフライのような形になっている)を見ていたら、木の上の方に本物のリスがいるのを発見した子がいました。すごい! 湘南地域では、飼われていた台湾リスが逃げて野生化した個体が増えて困っていますが、この森にいるのは正真正銘のニホンリスだそうです。
お次は、富士樹海「あるある」の代表格、方位磁針が狂うお話。溶岩に方位磁針を近づけると、確かにさっきとは違う向きを示します。これをわかりやすく実験するために、ひものついた磁石を貸してくれました。溶岩に磁石を近づけると…「あ!ほんとにくっついてる!」と実感していました。これは、溶岩の成分に鉄が含まれているから起きる現象だそうです。
さらに、ペットボトルから溶岩の上にこぼした水が、みるみるうちに溶岩に吸い込まれていく様子を観察。「富士の天然水」として流通しているのは、このように溶岩の穴を通って地下水となったミネラルウォーターをボトリングしたものだと教えてくれました。
太い幹がバキッと折れて倒れているのを見つけると、「ああ、きのう説明したよね、育ちすぎてバランスが悪くなって倒れる木の話」と、すかさず解説。「あー、あのことね」と、子どもたちの頭にどんどん情報が入っていきます。溶岩ドームの成り立ちも、「お餅を焼いたら、中の空気が膨張してプーッとふくらんで、限界まで来ると上が割れるでしょ、あれとおんなじ。溶岩の中のガスが膨らんで空間ができて、天井のところがどさっと落ちてこうなったの」と説明されると、ずっと昔の出来事がリアルに想像できました。
ハイキングコースのゴール地点はコウモリ穴洞穴。これも、溶岩ガスが出口を求めて拭きだしたときにできた大きな穴だと説明がありました。階段を一歩ずつ下がるごとに、体感温度も少しずつ下がって、洞穴の中は冷蔵庫の中のようにひんやりしていました。このグループは、めったに見られないコウモリを見つけて、「16年もガイドをしているけど、初めて見たよ! ビックリ!」と驚いておられました。洞穴の足下には、溶岩が流れてできた縄上の模様が。最近ニュースで報じられたハワイのキラウェア火山の溶岩にそっくりだね、と観察していました。
お昼は学年みんなで合流して、緑の休暇村でおいしいカレーライスをいただきました。その後、静岡県側での湧水の出口にあたる、陣馬の滝へと移動しました。
ここでまた、陣馬の滝に先に向かうチームと、ニジマスのつかみ取りに挑戦するチームに分かれました。
こちらはニジマスのチーム。養殖場の一角に設定されたつかみどり専用の生け簀に足を踏み入れると、キャー冷たい!と歓声が上がります。この生け簀が池ではなく、常に清流が流れている証拠です。ニジマスなどの川魚は、こうした清流でないと生育できないことも教えてもらいました。説明もそこそこに、子どもたちは大興奮でニジマスと格闘、ゲットした魚を次々とバケツに入れていきます。とれたてのニジマスは、スタッフの方が内臓を処理してくれて、さっそく炭火のバーベキューに。あたりに香ばしいいい香りが漂います。普段、お魚が苦手で「一口だけ食べる」と言っていた子たちも、食べ始めると「おいし~い!!」ときれいに完食。ガイドさんから、「君たち、上手に食べるねえ」とお褒めの言葉をいただきました。中には、骨をもう一度炭火にあぶって、骨せんべいにして味わっている子もいました。富士山からの水の恵みを舌で味わう体験となりました。
早めに食べ終わったグループは、養殖場の奥に広がるわさび園を見学。わさびの栽培も、きれいな清流がないとできないことを教わりました。
続いて、最初のチームと交代して、陣馬の滝へ。鎌倉時代に、源頼朝がここにやってきて陣を張ったので、こんな名前がついたのだと教えてもらいました。富士山からの伏流水が断層から勢いよく流れ出る様子は、迫力満点。ガイドさんの説明と注意を聞いて、子どもたちは水の中にジャブジャブ入って水遊びを楽しみました。この清流も、しばらく足をつけていると感覚がなくなるくらいの冷たさでした。
楽しい時間はあっという間にすぎて、夕方、宿舎のホテルに戻りました。2日間お世話になったガイドのみなさんと、お別れのあいさつをしました。ガイドさんからは、富士山について興味を持ったことがきっかけで、アウトドアの活動が好きになったり、自然保護の活動に参加する子が増えてくれたら嬉しいな、というお話がありました。最後に、印象に残ったことや感想を発表するグループ、ガイドさんと一人一人握手するグループ、それぞれに感謝の言葉を伝えて、別れを惜しんでいました。
子どもたちに貴重な学びの機会を提供してくださった富士山クラブの皆さん、本当にありがとうございました。
このあとは、キャンプファイヤーが待っています!