新聞から学ぶ

2021年6月25日

 忘れた頃に、僕の手元に届く新聞があります。
「石巻日日こども新聞」がそれです。「石巻日日こども新聞」は、子どもたち(小・中・高校生)の取材活動により、岩手県石巻の今を伝える新聞です。石巻日日新聞社の協力により本物の新聞と同じ仕様で制作されています。東日本大震災から1年後の2012年3月11日創刊、季刊で年4回発行されています。今年の3月2日には、第55回吉川英治文化賞を受賞しました。これは、日本の文化活動に貢献した個人や団体に贈られる由緒ある賞です。
 新聞の内容は人物を中心とした記事が多く、全体的にメッセージ性の強さを感じます。創刊号に載っている震災の恐怖と不安からくる子どもたちの声に、胸を締め付けられる思いがします。そして、発行を重ねる毎に取材された人の声や書かれた記事から、復興に向けて多くの希望が感じられるようになりました。どんな記事も読む人の立場になって、丁寧に取材をしていることが伝わってきます。


 5年生の廊下に掲示されている新聞を読めば分かるのですが、やはり現場に行ったからこそ書ける記事だと感じます。
 僕が担任になったばかりの頃、社会科の四大公害病の授業のゲストティチャーとして、読売新聞の記者の方をお招きしたことがあります。その方は富山県でイタイイタイ病の取材をされた方で、当時の新聞も用意してくれました。カドミウムを排出した鉱業所、病を患った流域の人、診察をした医師の生々しい話に、子どもたちの心は揺さぶられました。授業の中でTくんに考えを聞く場面がありました。様々な立場の人がいることを知り、時間をかけて悩んだ末に出てきた彼の言葉は、「修成、僕、分からないよ・・・」でした。この授業を通して子どもたちが学んだことの一つは、「世の中は考えても考えても答えが見つからないものがあるんだ。」ということでした。
 Tくんは湘南学園の高校を卒業した後、富山県の大学へ進学し、今は大手建設会社で働いています。就職が内定したときは小学校へ来てくれました。「修成、僕はこれから何か大きな事業をするときに、人のためになって、人に優しい仕事をするよ。」Tくんらしい言葉でした。