命を守る訓練 ~火災発生編~

2017年10月30日

 4月から「地震発生時の避難訓練」や「津波を想定しての避難訓練」を行ってきましたが、昨日は火災発生を想定しての避難訓練を行いました。

 直下型地震の後に、家庭科室から火災が発生。「自分の命を守るために、どのように行動するか?」という訓練でした。今回は、行方不明者や負傷者がいる設定なので、本部とトランシーバーで連絡を取り合いながらの安否確認となります。一緒に避難した子どもが途中からいないのですから、教師も子どもたちも心配でなりません。指令者の私から「専科の先生方、集合してください」と声を掛け、捜索隊を出そうと思っていた矢先、トランシーバーから「行方不明者発見…」「病人発見」の情報の数々が本部に入って、ホッとしました。訓練とは分かってはいても本番さながら。児童発見までの一部始終を見て、聞いていた子どもたちと教職員に、校長から最後に話す機会がありました。

 色々話したいことはありましたが、私が以前住んでいたマンションで起こった火災について、本当にあった話として真剣に話しました。地震や火事は、いつ起きるか分かりません。もしもの時、自分の命をどう守るか。そのためには訓練が大事であること。「自ら真剣に考えて、行動する日常の訓練が大事である」と実感したことを子どもたちと教職員に話したのです。

私は10年前に小田原の駅の西側にある大きなマンションの8階に住んでいました。マンションのすぐ下には、新幹線・東海道線・大雄山線・小田急線が真下に見え、小田原城まで見えるとても良い所で、平和に暮らしていました。
いつも通りの生活をしていた真冬の土曜日の夜中から明け方にかけてのこと。

夢の中で、「火事だ!」「火事だ!」という叫び声がかすかに聞こえてくるのです。
何だか騒がしいなぁと、思っていた矢先。

旦那さんが飛び起きて「火事!」と、反応しました。当時、小学生と中学生だった子どもたちも飛び起きました。
真っ暗でした。まさか…
8階で、窓ガラスは2重で防音装置がしっかりしていますから、外の音はあまり聞こえません。

窓を開け、下を見ると、新幹線の駅のホームからマンションに向かって、
ラッパ(拡声器)で「○○ビルの皆さん、起きてください!火事です。逃げてください。!」と人が懸命に叫んでいます。

下を覗くと、消防車が見えます。まるで、ドラマのようでした。

現実を受け止められないまま、旦那さんが一番に動き出し、続いて子どもたち。
私は、一瞬身体が止まったように思います。

「着替えろ」「早く」「母さん、早く」…「逃げるよ」「いいか」…「母さん、早く」など、緊張のある声が飛び交います。

自分で考えて、本当に必要なものを簡単に準備。バックの中に①お金・②鍵・③通帳・印鑑、④携帯電話、そして寒さ対策の上着。その程度で、諦めました。

「部屋の中の物が、全て火事で焼けてしまうのか?」と、頭をよぎりました。

「もうこの部屋には戻って来れないのかも」「貴重品は持ったか」と頭に浮かびましたが、考える時間すらないほど、バタン・バタンという、ドアを閉める音が隣近所から聞こえ、響いてきます。
「逃げなきゃ…」。わかっているものの玄関から外に出るまでに一番もたもたしたのは、実は私でした。

玄関から出てもここは8階。下まで無事に下りなければなりません。他の家族も避難し始めました。「助からなければ。家族含めて、助けなければ」と、必死でした。

エレベーターは使えませんから、階段を使いました。
「おかしも…おさない・かけない・しゃべらない・もどらない」は、身についています。

必死すぎて、途中はあまり覚えていませんが、一段一段下りました。
「助かった」とホッとしたのは、目の前の小田原駅に着いた時。マンションの地下のお店から煙が出ていました。
駅前のロータリーが消防車や救急車でいっぱいになり、消防署の方々が消火活動をする姿を見て、肩の力が抜け、座り込んだことを覚えています。

次々に人が避難してきて、全てが終わったように不安いっぱいの時、私たち大人が中心となって、地域ごと・マンションごと・階ごとに集まりチェックをしたのです。自分たちができることを見つけ、自ら動きました。

お家に戻れたのは、8時間後のお昼過ぎでした。次の日の新聞にその時の様子、消防車が駅前にぎっしりと止まっている写真と記事が載っていました。

 
 このようなことは、経験しない方が良いに決まっています。しかし、これからの長い人生の中で、皆さんにも起こりうるかもしれません。

 私がこの経験で学んだことがいくつかあります。

①「どこが火事なのか?」「火元がどこか?」と伝えることが大事。
 ・今日の火元は、家庭科室でした。

②自分で考えて行動する。
 ・どの方向に逃げると助かるのか。風向き・火元など、情報収集が大事。
 ・本当に必要なものは準備しておく。
  持って逃げる物を掲示しておくと、いざという時に迷わず、しまった!ということがないのだと思います。
  (職員室には掲示済)

③色々な場面を想定し、日頃からの「訓練」を真剣に行っておく。
 ・この経験が、いざという時に役立つ。



 翌日、私の話の感想をお家の人に話した子が多くいたことがわかりました。「話の続きが聞きたい」と5年生の男の子に言われたり、
1・2年生からは、

・「現実に起こったらこわいなぁ。」
・「先生の話、こわかったよ。リアルだったよ。」
・「備えを常にしておこうと思った。」
・「防災ポーチを準備しているよ。」
・「おかしもな。「な」は泣かないだよ。こわくて泣いても落ち着いて行動しようと思った。」
・「こわかったけど、現実なんだね。こわくても立ち止まってはダメだと思ったよ。」

など、感想が寄せられました。
 
 「命を守る訓練」を、大人も子どもも真剣にやることの大事さも伝えました。