『松ぼっくり』-命のつながり-

2022年1月13日

 子どもたちが文集『松ぼっくり』と向き合っています。担任の先生から清書用の原稿用紙を配られ、〆切りの間際ということもあり、多少の緊張感の中で鉛筆を走らせています。
 毎年発刊されている『松ぼっくり』には、全校児童一人ひとりの作文が掲載されています。ですから、1年間の作文の集大成ともいえます。今年度『松ぼっくり』は第102号が発刊されます。メディアセンターには、昭和24年に発行された創刊号から今に至るまでのものが大切に保管されています。古い『松ぼっくり』を紐解くと、当時の子どもたちの様子やその時代のことがよく分かります。書くという行為は時代を綴ることになり、歴史を残すことにもなるのだと思います。

 昨年度の『松ぼっくり』を発刊した後に、僕のところに一通の封書が届きました。差出人の名前に記憶はありません。便箋には筆で書かれた、この上なく達筆な文字が連なっていました。差出人の方は学園の卒業生であり、ご令孫が小学校に在学中だということが分かりました。ご令孫が持ち帰った『松ぼっくり-第101号-』に懐かしさが募り、校長である僕に手紙を出したということでした。文面に溢れる畏敬と感謝の念の言葉に恐縮しながら手紙を読み進めると、当時の学園生活のことがしとやかに綴られていました。また、在学中に『松ぼっくり』が創刊されたことも書かれていました。早速調べてみると、創刊第2号の中にお名前がありました。
 今、目の前には二冊の『松ぼっくり』があります。第2号には、当時5年生の差出人である御祖父の俳句と詩が、豊かな情景描写を持って表現され載っています。そして、第101号には楽しく弾けるように学校生活を送っているご令孫の作文があります。ここに72年の命のつながりをも感じます。

 この項の最後に、いただいた手紙からの一文を拝借します。「今回の『松ぼっくり』を拝見し、伸び伸びと子どもの個性を生かす、自由溢れる湘南学園の伝統を改めて噛みしめた次第です。」今も昔も変わらぬ学園らしさが、ご令孫を通わせている差出人である卒業生の言葉から伝わります。