平和

2021年9月1日

 今日から2学期が始まりました。いつものようにピロティで待っていると、元気な子どもたちが次から次へとやって来ました。高橋航先生が「子どもたちがいるっていいですね。」と声を掛けてくれました。全くその通りです。
 この夏は、オリンピック・パラリンピックもあったからでしょうか、「平和」という言葉を多く耳にしました。
 『湘南学園四十年の歩み』には、戦時中の学園の様子が書かれています。小学校に防空壕が設置され、警報が鳴り響き授業が中断されたこと。また、教員が義勇隊(竹やり訓練)に動員され、爆撃で孤児となる児童がいたりと、胸を締め付けられる話ばかりです。

 僕は中学生の時に社会の先生から、「日本人が平和を語る上で、二つの歴史上の出来事を決して忘れてはならない。」と言われたことがあります。ひとつは広島・長崎に投下された原爆のこと。もうひとつは沖縄の地上戦のことです。
 原爆の日。広島では二人の小学6年生が、世界へ向けて平和の尊さや大切さを伝えることが、自分たちの使命であると誓っていました。長崎では高校生が赤い糸で手をつなぎ、「私たち若者の力で平和な世界を実現していく。」と核兵器根絶を訴えました。
 沖縄全戦没者追悼式では、沖縄県内の小中高生から選ばれた子が自身の「平和の詩」を朗読しました。今年選ばれた中学2年生の詩は、沖縄の言葉で「みるく世の謳」という題名です。「みるく世」とは「平和な世」のことです。戦禍による暗黒の過去を見つめつつ、命をつなぐ大切さを強くきっぱりと尊い言葉で紡いでいます。
 自分の言葉で平和への思いを述べた子どもたちは、自分たちの知らない過去を知らないこととはせず、しっかり向き合い未来への一歩を踏み出しています。

 心から「平和」を願った小中高校生たちと、コロナ禍で学校生活を送る湘南学園の子どもたちに、先生と呼ばれる僕等に出来ることは何か。それはただひとつ。子どもたちの学びの場を守り、どんなに困難なときでも「生きるって素晴らしいことだ。」と伝え続けることです。
 ※本文は『小学校だより』を一部改編、加筆したものです。