音楽会への願い

2021年10月25日

 湘南学園小学校の88年の歴史を知るための一番の手立ては、『松ぼっくり』に掲載されている子どもが綴った作文です。あとは、40、60周年などに発行された記念誌も歴史を辿るには貴重な資料です。
 先日、運動会の歴史を知る資料を校長室の本棚から探していたときに、『湘南学園小学校の教育 第二号-私たちの大切にしてきたもの-』という冊子に目が止まりました。それを手に取り、目次を開くと「第一回音楽会」の文字が目に飛び込んできました。その瞬間、本来探していたものはすっかり頭から離れてしまいました。なぜなら、運動会についてはいくつかの資料に行き当たってきましたが、音楽会についてはそれがなかったからです。今まで探しても見つけることのできなかった音楽会の歴史を知る資料が、不意に目の前に表れたのです。

 『湘南学園小学校の教育 第二号』は昭和60年3月に発行されたものです。その中で当時の音楽の先生が昭和52年度に実施された最初の音楽会について触れていました。そこには「音楽会を全校で取り組むことで、児童も教師も歌うことが楽しくなるように」という願いが書かれています。全校合唱の曲は『歩いていこう』です。この曲には二つの思い出があります。ひとつは僕の小学5、6年時の恩師がこの歌が好きで、僕等の前で大きな声で歌ってくれたことです。ふたつは、僕が教員免許を取得するため、授業を受けた大学の音楽の先生が『歩いていこう』を作曲された小宮路敏先生だったということです。心が温かく大らかな気持ちになる授業でした。後の話ですが、恩師もこの小宮路先生に音楽を教えてもらい『歩いていこう』が好きになり、僕等に伝えたということを知りました。
 音楽会のクラス合唱はクラスの雰囲気に合った歌を選んでいます。これは今も変わりありません。ですから、担任をしていると音楽の先生がどのような曲を選んでくれるかとても楽しみでした。教員合唱もあったようで、毎週金曜日に放課後練習があり、本番が近くなると毎日練習になったと書かれています。
 音楽会の発表の場所は、中高の体育館から藤沢市民会館 鎌倉芸術館と大舞台になっていきました。高学年になると、子どもが指揮を振りピアノを弾きます。その堂々たる姿にいつも感心させられます。(上・中の写真は昭和55年)
 コロナ禍において、音楽会も合唱から合奏への変更を余儀なくされてしまいました。しかし、音楽を通して自分を表現することに変わりはありません。
 
 教室からは子どもたちの楽器の音が、時を奏でるように響いてきます。