時を越えて

2020年9月11日

 4月から校長になり、様々な年代の記念誌に目を通し、昔の写真にも触れてきました。来年度へ向けての学校説明会では、湘南学園小学校の最初の卒業式の写真を紹介しています。
 しかし、自分の言葉で湘南学園の歴史を語るには、まだまだ時間が掛かりそうです。


 先日、『さくらがひ』という児童文集を手に取る機会に恵まれました。
 昭和10年3月に発行されたもので、表紙に手描きの絵が貼られていることを考えると、個人贈であることが推測されます。
 そして、1年生から6年生までの作文が載っているので、昨年度100号を迎えた『松ぼっくり』の前身になるものだと思われます。
 表紙をめくると古い紙から、まるでお香のような匂いが漂ってきます。
 扉の裏には当時の校長から『「さくらがひ」の言葉』と称して、次のように綴られています。


 『さくらがひ』は、どの号も、どの号も、かげがへのない大事な記念品であるが、今年度のは更に新しい意味で忘れがたいものである。それは廣岡さん、田坂さん二人の最初の卒業生を送り出す記念号だからである。(中略)湘南学園は今後何百人、何千人の卒業生を出すかも知れないが、第1回の卒業生は、二人しかないのである。この『さくらがひ』も大へんよく出来た。一番上のお姉さん方をお送りするのに似合はしい作品ぞろひである。(後略)昭和10年3月20日」

 この言葉を読んで驚きました。
 なぜなら、学校説明会で紹介した最初の卒業式の写真の中に廣岡さん、田坂さんの二人がいたからです。
 そして、二人の手書きの作文を読んだときは、目の前に立っている感じすらしました。
 約80年前に、彼女たちが今僕の目の前にある『さくらがひ』の頁をめくっていたことを想像すると慕わしく思います。