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校長日記

慕わしき松ぼつくり

2021年3月16日

『松ぼっくり』第101号をお届けしました。
4月から校長になり、様々な年代の記念誌などに目を通しました。
ある日、『さくらがひ』という湘南学園小学校の古い児童文集を手に取る機会に恵まれました。昭和10年3月に発行されたもので、学園創立後に初めて送り出す卒業生二人の作文が載っています。また、表紙に手描きの絵が貼られていることを考えると、個人贈であることが推測されます。1年生から6年生までの作文が載っているので、今年度第101号を迎えた『松ぼっくり』の前身になるものだと思われます。『松ぼつくり』は『さくらがひ』から14年後の昭和24年9月に創刊されました。
『さくらがひ』の頁をめくると、古い紙からまるでお香のような匂いが漂ってきます。扉頁の裏には、当時の園長から「春、東海の濱邊。『さくらがひ』の名こそよけれ。子供等よ、すこやかに育て!」という言葉が、当時の子どもたちへエールを送るかのように届けられています。
ある日、『さくらがひ』と『松ぼつくり』の創刊号を今年度の6年生に紹介しました。その時の子どもたちの感嘆の声と笑顔は、湘南学園小学校を卒業していった先輩と自分たちが、時空を越えてつながった喜びがあったからでしょう。創刊号に載っている最初の卒業生二人の作文を読み聞かせたときは、6年生の教室がしっとりした空気に包まれました。最初の卒業生と今年度87回目の卒業生が、同じ教室で一緒に授業を受けているようでした。そして、約80年前に二人の卒業生が、今目の前にある『さくらがひ』の頁をめくっていたことを想像すると麗しく思います。
後日、6年生児童から、祖父が湘南学園小学校の卒業生だということを知らされました。昔の『松ぼつくり』を追いかけてみると、第17号に御祖父様の名前があったのです。それもまた六年生の前で紹介しました。孫に当たる児童は、クラスのみんなの前で自分の祖父の作文を発表されたからでしょうか、何とも照れくさそうにしていました。その児童の作文は世代をまたいで、第101号に掲載されています。
『さくらがひ』や『松ぼつくり』は、子どもの目線で見た時代を映す鏡であり、湘南学園小学校の歴史そのものであります。文集を紐解けば、各年代の運動会や修学旅行などの様子が、昨日の出来事のように伝わってきます。また、空襲警報が鳴ったときのための訓練のことや、家に家鴨が三羽いることなど、当時の生活の様子も生々しく綴られています。
毎年二学期の終わりから三学期にかけて、子どもたちは『松ぼっくり』のための作文を書くことに没入します。
今年度の『松ぼっくり』には、新型コロナウィルスのことを書いている児童がいます。何十年後かに、第101号を読んだ人は、感染拡大の影響で学校が休校になってしまったり、マスクをして学校生活を送らねばならないほどのことだったのかと、きっと驚くことでしょう。
しかしながら、どの年代の作文を読んでも文章に瑞瑞しさを感じるのは、子どもたちが自分に近い日常的な出来事を、自然体で綴っているからではないでしょうか。これからも、子どもたちを取り巻く状況は目まぐるしく変化していきます。しかし、作文から伝わってくる子どもたちの日々が、いかにかけがえのないものであるかは、今も昔も変わりありません。
今年度卒業する6年生に『松ぼっくり』への思いを聞いてみると、幾年も積み重ねてきた『松っぼくり』の面白味を感じざるを得ません。
「わたしが1年生の時に書いた作文を見てみると、わたしのことを書いている人がいてびっくりしました。松ぼっくりは色々な人に見られるのですごくはずかしくなりました。」
「私は1年生から5年生の自分の文を読むと、よく文章のちがいを感じます。幼い文章、でも、素直な気持ちが書いてある文。大人な言葉を豊富に使っている文。あ~あの時こんな気分で書いたのかな。などと思います。」
創刊号に書かれている当時の園長の最後の一文に思いが募ります。
「やがて、いくつもの『松ぼつくり』がつみかさねられるとき、それは、みなさんの子どもの日の、かけがえのない歴史・たましいの記録となるでしょう。」
2021年3月。みなさんの二度と戻ることのない大切な子ども期に、教師としてたずさわれたことを誇りに感じています。そして、歴史ある『松ぼつくり』に、子どもたちと一緒に一頁を綴れたことを、何より嬉しく思います。

※本文は『松ぼっくり 第101号 校長の頁』を一部改変しました。