シリーズ Incredible India! 知られざるインド文化 最終回「カースト制度」

2017年2月7日

ついにシリーズ Incredible India! 知られざるインド文化も最終回を迎えました。今回は「カースト制度」についてお話をさせていただきます。
 

◆ 第一回のページはこちら

◆ 第二回のページはこちら

◆ 第三回のページはこちら

 

 

英語の教科書とLesson 8のタイトルをヒンディー語で書いたメモ

 

学校でインドについて学習したときに必ず出てくる「カースト制度」。どういうものかと簡単に説明すると、カーストとはインドの閉鎖的な社会集団の呼び名で、古代にインドに侵略したアーリア人が先住民との間に身分差別を作り出したことに端を発しています。基本的に、バラモン(司祭階級)・クシャトリア(王族)・バイシャ(庶民)・シュードラ(隷属民)の4グループに分かれるが、さらに社会生活の複雑化に伴い現在では2千から3千のカーストがあるといわれています。カースト内での団結が強い反面、異なるカーストとの結婚や交流が禁じられる場合や、上記の4グループに属さない不可触民(いわゆるアンタッチャブル。被差別民)もいます。インドでは憲法でカーストに基づく差別は一切禁止していますが、差別が色濃く残っているという現実もあります。

 

さて、インドでは自己紹介するときに下の名前だけを名乗る人が多くいます。「何で本名をフルネームで名乗らないのだろう?」といぶかしく思うこともありましたが、あるときインドの現代社会についての本を読んでいてその理由がわかりました。その理由とは、ある種の「苗字」はその人がどのカーストに属するかを示してしまうことです。たとえば「インドの魔術師」の異名をとる高名な数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(1887 – 1920)はラマヌジャンという苗字によってバラモン階級に属するということがわかります。よってカーストを明かしたくない人などは苗字を名乗りたがりません。

 

 

教科書の登場人物たち:真ん中下がインド人Raj Shukla 名前をヒンディー語で書いたメモも

 

また、インドではIT産業の発展が著しいですが、インドでIT産業が発展した理由のひとつもカースト制と関係があります。確かにインドは、古来よりインド哲学の一環として数学が発達し、「0の発見」など目覚しい成果を挙げてきました。現代のインドの算数でも、九九(くく)を20の段まで暗誦するなど、すばらしい点があります。こうした能力的な背景の一方で、インドの職業の多くはカースト制度と結びついているということを思い出してください。「教員には教員のカースト」「音楽家には音楽家のカースト」「清掃員には清掃員のカースト」があるわけです。そのような中で「IT産業技術者のカーストは?」というと、この手の職業は20世紀になって新しく出現したものなので、カーストがありません。よって、カーストによる職業の制限から抜け出したい人たちが、こぞってIT産業に参入ししのぎを削っていることで、インドのIT産業は急速に成長しました。ただ「インドはITがすごい」というだけでなくその背景を知ってほしいという思いや、差別をなくしてほしいという願いからこの話を授業でしました。

 

さて、全4回にわたってIncredible India!知られざるインド文化と銘打って学びBLOGを執筆させていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございます。今後も授業等で扱う興味深い話題を提供させていただきたく思います。学びBLOGを今後ともよろしくお願いいたします。