書の道

2021年5月11日

 5年生が書道の授業をしていました。
 教室があまりに静まっていたので、扉を開けるのもはばかれるほどでした。
 ガララと音がしても、書いている途中の子は全く気にする素振りも見せませんでした。集中して向き合っているのがよく伝わってきます。その様子を見て自分の小学校時代を思い出しました。


 僕の小学3年生のときの担任は、書道が専門の若い女の先生でした。天気のいい日の午後の授業は、「散歩に行こう!」と言って、学校の近くにある里山へよく連れ出してくれました。普段はやんちゃな僕等に寄り添ってくれ、明るくて優しい先生でしたが、書道の時だけは一変しました。姿勢はもちろん、息の仕方までとても厳しく指導されました。教室で聞こえるのは筆が動く音だけです。僕等は書道の時間を「修行の時間」と呼んでいました。その先生は、今では奈良県で書道教室をしています。


 5年生は「成長」という字を書いていました。とめ、はね、はらいがあり、なかなか難しい字です。
 一枚書き終わって、一番後ろの男の子が「俺って天才。」とつぶやきました。その一言って、とても大事だと思うのです。周囲はどうであろうと、「自分は自分でこれでよし!」と思えること、口に出せることは大切です。これも立派な自己肯定感だと思います。書き上げた半紙を目の前に掲げしみじみ見てる女の子がいました。とても満足そうでした。