音を奏でる

2021年11月12日

 鎌倉芸術館で音楽会が行われました。
 各クラスで演奏された曲の中には、よく知られたものがたくさんありました。個人的にも自分の人生を断片的に想い返すような曲がいくつかありました。
 第一部からの演奏が進み6年生の番になると、もっと聴いていたいという思いにかられました。
 ふと自分の中で、あっという間に終わってしまう曲の短さと、線香花火の美しさの中にある儚さが重なりました。


 ある夏に奥飛騨の古民家を利用した静かなカフェに入ったときのことです。レジのところに珍しい線香花火が置いてありました。店の人に尋ねてみると、関西の花火職人が米づくりから始め、収穫した藁で丁寧に作ったものだということが分かりました。買ってみたものの、その後火をつけてしまうのがもったいなく、未だに繊細で古風な着物をまとったような姿のままです。自分の中でその思い出が強く残っているので、子どもたちが奏でる音楽と線香花火とが重なったのでしょう。


 線香花火の先端に火がついたときのように期待いっぱいで曲が始まり、火薬に点火されたときのようにパッと音が輝き、火玉から放たれ弾けた光が大きく強く広がっていくように、たくさんの楽器の音が重なり合ってホールに響き渡りました。そして、楽器の音が無くなったあとに生じた余韻も、線香花火の灯火が消える様子と重なりました。楽しかった、おもしろかった、もっと見ていたい、聴いていたい、そして終わってしまうことの切なさも・・・
 そのように心の中に様々な余韻が残ったのも、子どもたちが奏でた音が心に届き、心を動かしたからでしょう。聴いてくれた多くの人たちが同じだったに違いありません。
 幸せな時間を過ごすことができました。
 子どもたちにまた感謝です。