雪やこんこ

2022年1月25日

雪やこんこ あられやこんこ
降っては降っては ずんずん積もる
山も野原も わたぼうしかぶり
枯木残らず 花が咲く
 「雪」作詩:武笠三、作曲:不詳

 雪の学校の日々は、まさにこの歌の通りでした。
 出発の日は、川端康成の『雪国』の冒頭と同じ風景の変わりように、新幹線の中では「うわあ!」と子どもたちの歓声が上がりました。そして、この日は越後湯沢駅から乗り換える予定の、在来線ほくほく線が運休してしまうほどの積雪がありました。宿に向かうバスの中から、屋根の雪かきをしているのを初めて見ました。おばあさんが屋根に登って大きなスコップで雪を降ろしていたのです。もちろん命綱などなく、滑り落ちるのではないかと見ているこちらがひやひやしてしまいました。「地元の子どもは遊ばないよ。」と言われるほどの雪の降り方でしたが、湘南の子は寒さなど何の其の、雪まみれになってはしゃいでいました。
 除雪車の音で目が覚めたその日は青空が顔を出しました。「美人林」と呼ばれるほどの美しいブナ林の中でスノーシューをしました。降り積もった雪の上へ身体を預けるように仰向けに倒れ込みました。最初は背中の冷たさに声を上げていた子どもたちも、林の静けさに合わせるかのように静かになってゆきました。
 雪に包まれ見上げた空は青く、空気は凜と澄んでいて、全ての音は雪に吸収され、風に乗ってさらさらと落ちてくる雪さえ心地よく、ブナの樹幹流には生命の営みをも感じました。心が安定し、自然と自分との壁が消えた気持ちなりました。
 この地で暮らしている方から、雪解けと同時に進む新緑の季節が最も美しいと聞きました。毎年長い冬を越えているからでしょう、話をしているその眼は嬉しそうで、生命の息吹と同じように生き生きとしていました。
 昔あそびの時間は、地元のお年寄りと温かい時間を過ごしました。子どもたちは会話の中に出てくる方言からも、湘南とは異なる地に来たことが実感できたと思います。十日町の冬は寒く雪深い日が続きます。だからこそ、人の心が温かく自然も豊かになるのだと思います。僕はある夏に「美人林」に向かう森の中でキャンプしたことがあります。誰もいないキャンプ場で、夜にはふくろうに出会いました。十日町はどの季節に来ても豊かな気持ちにさせてくれます。

 こうして雪の学校のことを綴っている今も、あの地には優しい人たちが冬の暮らしをしていて、寒風の中でブナは息づいていて、ふくろうが森の中でひっそりしているに違いありません。そんな思いを馳せると幸せな気持ちになります。