己の手を動かし、人の心を動かせ

2022年2月15日

 制作展が終わりました。子どもが初めて制作に着手し、手数を加えて完成させ展示するまでたくさんの時間を掛けました。それと比べ、華やかな開催期間と作品が撤収されるまでの時間はあっという間です。それは、桜が開花し満開を迎え、散ってしまうまでの時間と同じようです。
 今年度の制作展を振り返ると、色味がやわらかく優しく温もりを感じる作品がたくさんあったと感じます。子どもが自分の作品を愛し大切にしているから、観ている自分がそのように感じるのだと思います。
 また、今年度の作品の中には手元に置いておきたくなるものがいくつかありました。1年生の木々の実を使った作品の中には、指先に乗せられるくらいかわいいものがあったり、6年生の木工作の中には、想像を越える時間を掛けて磨き上げたであろう木の球体がそれです。特に木の球体は職人業を見ているようで、ほれぼれしてしまいます。



 図工の中村先生は、「木材を使って、いま本当に作りたいものを作りました。ていねいに根を詰めた仕事は、小学校時代にどうしても通ってほしい道です。樹木として生きてきた命を受け継ぎ、新しい命を生み出しました。」と記し、「木の球体を作る取り組みは、やればできるがいつも目の前にあるのです。途中で投げ出さなければ、誰にでも到達することができます。しかも、完成した後もその気持ちが下がりません。右肩上がりの実践なのです。」と話してくださいました。
 法隆寺の宮大工の西岡常一棟梁は、「木は二度生きる。」と言っています。一つは、木のいのちとしての樹齢。もう一つは、木が用材として生かされてからの耐用年数のことだそうです。また、職人としての心構えを次のように語ります。「手取り足取りの指導などしない、自身が体で覚えろ。優れた仕事を見て、それを盗め。口より先に手を動かせ。」どちらも中村先生の言葉に通じるところがあります。