昆虫記-其の弐-

2020年7月17日

 前回の校長日記の続きです。

 僕に日記を見せてくれたHさんは、次の日なんとクロアゲハのさなぎを持って来てくれたのです。

 「これあげる、もうすぐ羽化するよ。」
 「!!!!!!!」

 僕があまりに驚いたので、子どもたちが集まってきました。プラスチックのケースの中に、割り箸が立て掛けられており、そこにさなぎがぶら下がっていました。

 「二本の糸でぶら下がっているんだよ。」とHさんが教えてくれました。残念ながら、老眼の僕には見えません。(笑)それほど、細い糸なのです。僕の知っている茶色のさなぎとは違って、透明感のある黄緑やお茶のような色に黒が混ざっていました。その複雑な色の混ざりが、もうすぐ羽化するのでは?という期待を持たせるのです。

 残念ながらチャイムが鳴ってしまい、子どもたちは教室へ向かいました。あとは僕に託されました。

 ケースごと保健室に置かせてもらい、保健の先生と羽化するのを見守ることにしました。10分、20分、60分と時間が経過すると、さなぎの様子が変わってきました。色が黒くなり、蝶の眼だと分かるものが透けて見えるようになりました。形も上の部分が膨らみ始め、猫背のようになってきました。その著しい変化の様子に、羽化する期待は増すばかりです。

 「あー!!!!」

 なんと、僕等が目を離したときに羽化してしまいました。残念無念・・・

 しかし、羽化の様子を授業中で見られないHさんに見せてあげようと思い、ビデオを撮っていました。



 羽化したクロアゲハは、Hさんたちと学びの森に離しました。初飛行で風を捉えて飛ぶ姿はとても優雅でした。Hさんのおかげでとても充実した日を過ごすことができました。

 今回のクロアゲハの羽化もそうですが、自然界のことは人間の思うようにはいきません。子育てについても全く同じです。二人の息子が社会人になって思うことは、結局子どもは親の思うようにはならないということです。だからこそ、自然界にも子どもにも無限の可能性があると思うのです。『昆虫記』を書いたファーブルはこんなことを言ってます。

 「現実というのはいつも公式からはみ出すものだ。」