公開研究会2016

2016年11月11日

 11月5日、本校では「公開研究会」を開催しました。2校時目に全学級の公開授業、3校時目に研究授業を行いました。今年度の公開研究会では、公開授業・研究授業すべて「国語」の授業という新たな試みをしました。

【研究主題】

「豊かな学び」を目指して
~「書く」ことを通し、ともに育つ~

 
 湘南学園では2011年度より幼・小・中高の全教職員参画型の“全学教研”を毎年実施しています。これは総合学園としての湘南学園が目指すべき目標と各パートの教育的課題設定とその取り組みの報告、そして総括を含めた研究会です。小学校では、2009年度の教育研究部設立以来、昨年度までの7年間、研究主題「学び合い」をテーマに研究を重ねてきました。
 
 今年度から新たに、「書く」ことをテーマにした研究を進めることにしました。「書く」ことと最も関連のある国語を研究教科として、教科書単元・各学年で身につけさせたい力・本校独自の教育活動をつなげながら、「書く」ことの実践の可能性を探りました。指導側はどんな手立てや働きかけができるか。子どもたち同士が「書く」ことを通して、どのような変容が見られるか。「書く力を育てること」に留めず、書きたいことを子どもが内面から生み出せるような授業づくりを検討し、実践を積んでいきたいと考え、上記研究主題を設定し、「豊かな学び」の具現化を目指していきます。

     

     

     


 全学級の公開授業後、4年あまご組にて研究授業が行われました。
 単元は『10さいのわたし』。10歳になる節目の年に自分自身を見つめ、改めて自分の存在意義、これからの学校生活のあり方を考えて欲しいと考え、本単元を設定しました。まず、子どもたちの周りにいる大人へ「どんな10歳を過ごしたか」をインタビューすることから始まりました。今回の研究授業の前にインタビューした内容を文章化しており、この日は、友達の作品を読んで、良いところを見つけて自分の作品に活かしていく時間となりました。
 クラスの友達3人の作品が順次紹介され、その作品を全員で吟味し、「おもしろいと感じたところに青い線」「文の書き方が上手だと感じたところを赤で囲む」という作業をしていきます。自分の表現にはない上手さや面白さを見つけて、友達の新たな一面に気付くとともに、これからの自分の作品づくりへ活かしていくことがねらいです。後日、子どもたちに聴いてみると、やはり少し緊張していたみたいですが、集中力を切らすことなく取り組んでいました。




 研究授業の後は、本校教員と公開研究会へご参加いただいた方々と共に、授業検討会を行いました。研究テーマ「書く」についての各学年のおける実践報告、また今回の研究授業におけるポイント等を踏まえながら、様々な学校・教育関係者の方からたくさんの貴重なご意見をいただきました。
 
 昨年度に続き開催した「公開研究会」。『「書く」ことを通し、ともに育つ』をテーマとした本校の教育研究の取り組みは始まったばかりです。「書く」という行為によって、意識的に自己と向き合うことを促し、その過程における友達や教員との相互の関係を通じて、自己をより深く見つめたり、仲間の価値を見つけたりできるようになることを期待しています。研究の1年目としてまだまだ模索しながらではありますが、今回の公開研究会を一つの糧として、さらなる教育実践に役立てていきたいと思います。

【実際に研究授業を行った鈴木先生から~本時にいたるまで~】
 これまで4年生は、「書く」学習について、日記や行事作文、社会科見学後の新聞作りなどに取り組んできました。7月に行った山の学校(宿泊体験)も、その思い出を作文にしています。
 作文は、本来、自分の思いや経験を自由に表現できる活動で、楽しめる学習だと思っていますが、「課題として強制的に書かされている」という感覚になってしまうと、子供達は嫌悪感を示します。子供達が自然に書きたくなるような教材(題材)はないかと探し続けていたとき、『10歳のわたし』にたどり着きました。身近な大人へ「10歳の時何をしてたの?」「将来の夢は何だった?」とインタビューし、体験談を集め、それらを参考にして、自分はどうするか文章にまとめていく活動です。
 「大人に体験談を聞くこと自体、珍しく楽しかった」と子供達は言います。インタビューには随分と熱が入ったそうです。また、自分達の将来に関わると言うこともあるのでしょう。子供達は皆活動をポジティブに捉え、積極的に筆を走らせていました。いつもは「作文書くのいやだ!」と投げ出しがちな子供も、「今日は2行書いたよ、明日も2行書くね!」とコツコツ取り組んでいます。成長を感じ、嬉しく思いました。
 活動の工夫として、インタビューした内容を作文にまとめる際、「○○さんの話によると、~だったそうです」といった伝聞の形ではなく、「ぼくは……、わたしは……」と聞いた相手になりきってもらい、一人称で書いてもらっています。他人の話ではなく、自分のことのように考えることで、より深く考え、追体験してもらいたかったからです。文章も少しずつ具体的になり、手応えを感じています。
 本日は、友達の作文(下書き)を全員で読み、面白いところや上手な書き方を見つけるという授業をしました。普段は、先生が原稿用紙に赤を入れたりしますが、それでは先生とその子の、1対1の関係で終わってしまいます。クラスの仲間と共有し合うことで、友達の個性を知るとともに、「ああ書けば面白くなるんだ」「こういう言い方もありなんだな」と、自分にはなかった表現を身につけることができるようになりました。また、自分の作品が取り上げられると、「みんなに認めてもらえる」ので自信にもつながるようで、「次こそは自分の作品を!」と、頑張る子供も増えてきています。
 教師が添削するばかりでなく、子供達が読みあうことによって、お互いを認め合い、自分達で高め合えることが、この活動の良いところだと思っています。子供達の等身大の声が聴け、それが子供達自身にフィードバックされることで、現在の自分を知る手がかりとなることを期待しています。