2017年度 雪の学校3

2018年1月19日

雪の学校2日目は、あいにくの雨混じりのスタートでした。

宿舎の窓からは、宿の名前の由来である「雲海」が広がっていました。朝ご飯の後、AチームBチームのローテーションで、スノーシュー体験とわら草履づくり体験をおこないました。

 

Bチームは、午前中にまつだい駅前のふるさと会館に移動して、わら草履づくりの会場へ。

毎年お世話になっている、わら細工の名人の方々から、お手本の手さばきを見せていただきました。見ているだけだと、いとも簡単そうに思える工程が、実際にやってみると、まったくうまくいきません。あちこちから「先生、ここどうするんですか?」という声が上がると、膝詰めで手を添えながら「こうやって、ここを持って、ここを引っ張りながら…」とていねいに教えてくださいます。力が入りすぎて形がいびつになったり、目が粗くなってうまく編めなくなっても、何度も何度もやり直します。みんなあきらめることなくたっぷり2時間以上かけて、世界に一つだけの作品を仕上げることができました。自分の草鞋を手に、教えていただいた名人の皆さんと一緒に記念撮影。草鞋に込められたあたたかな心のふれあいも、大事なお土産となりました。

国語の文学教材に「わらぐつの中の神様」という素敵な作品があります。作者の杉みき子さんは、新潟県上越市の出身で、おそらくわら細工の名人の皆さんのような存在をモデルに、物語を構想されたことでしょう。主人公のおみつさんは、不格好でも一目一目に心を込めてわらぐつを編み上げます。そのおみつさんの人柄に好意を抱く若い大工さんとのみずみずしい心の交流を読み解くとき、十日町の皆さんとともに編み上げたわら草履の存在が、子どもたちの作品理解をぐんと深いものにしてくれることでしょう。

名人の皆さんとともに、子どもたちのわら草履作りのお手伝いに来てくださっていた地元の若いスタッフの方のつぶやき。「こうして教えてもらっている僕たちも、今のうちにいっしょにこの技を真剣に学ばないと、次の世代にわら細工の文化を継承できないから、必死なんですよ、冗談抜きで。」日本のいろんな地域で、人々の継承してきた大事な地域文化を守り、広げていこうと努力されている皆さんの心意気を感じました。

 

午後からは、Aチームと場所を交代して、十日町市立里山科学館 「森の学校」キョロロへ。心配していた雨も上がって、予定通りの行程が実施できました。

http://www.matsunoyama.com/kyororo/

十日町市松之山にあるブナ林、棚田、茅葺屋根といった雪国ならではの里山のど真ん中にある小さな科学館です。
ここは、市民・大学・民間企業らと共に地域の宝を研究し、その宝を展示・教育・体験・活動・里山保全・産業活性などへ幅広く活用し、今までにない地域づくりを目指している科学館です。(キョロロのWebサイトより)

非常にユニークな科学館で、建物自体が「大地の芸術祭」につながる芸術作品です。展示内容・方法も独特です。生きたヘビや亀に触らせてくれるかと思えば、芸術作品のように見事な蝶の標本展示があり、ブナの美人林を撮影したアート写真の前にはそこに生息している巨大なナメクジの生体飼育ケースが置かれ、地元の小中学生が総合学習で調べた地元の自然や文化を宝物として発表するコーナーがあり…etc。子ども向けの科学館かと表面だけをなぞっていると、この科学館の本当の値打ちを見過ごしてしまいます。Eテレの「昆虫すごいぜ」やラジオ番組「冬休み子ども科学電話相談」のような、小さなお友達相手に専門家がガチンコ勝負で自然の奥深さと美しさを全力で伝えようとする姿勢が感じられるのです。

森の学校キョロロの取り組みを始め、越後妻有アートトリエンナーレの芸術祭や、湘南学園小学校の雪の学校を支えてくださっている「雪だるま財団」の皆さんの活動など、地域の自然や文化の価値を全国に発信しようと地道に活動を続けてこられたことがひしひしと伝わってきます。

そんなわけで、この科学館の周りに広がる森そのものが貴重な自然教材になっています。館長さんをはじめとしたインストラクターの皆さんの案内で、なれないスノーシューでよたよたとよろけながらも、雪景色のブナ林に分け入ります。雪の上に残された動物の足跡をたどると、実がついたままの柿の木が。「タヌキがあの柿の木から落ちた実を取って走ってきたんだよ。」と、枝を揺すって落ちてきた熟れ柿の甘さを味わわせてくれます。ツバキの葉っぱで草笛の鳴らし方を教えてもらって、はじめてプーと音が鳴らせたときの喜び。子どもたちにとって、実感を伴うたくさんの学びがありました。(キョロロのWebサイトでも湘南学園小学校5年生の活動を紹介していただいています。http://kyororo.daizinger.jp/?p=2614)

藤沢で有機農法の米作りを教えてくださる相沢さんといい、十日町の皆さんといい、地域の自然と向き合って生きてこられた皆さん方から、本当の教育の意味をあらためて思い知らされます。「学ぶって、たのしい。わかるって、うれしい。」という学園小学校の合い言葉を、もう一度再認識した一日でした。

明日はいよいよ、子どもたちがもっとも楽しみにしていた民泊体験です。