第758回  “難民高校生”からの旅立ち

2013年10月18日

 「読書の秋」にちなんで、先日読んだ一冊の本を紹介します。『難民高校生』(英治出版刊)。著者は、仁藤夢乃さんという24歳の女性です。

書名にひかれて手に取り、すぐに購入しました。300頁を超える自伝的ドキュメンタリーですが、一気に読了して圧倒的な感銘を受けました。
高校生や若者、親御さん、もちろん教員にも幅広く読んでほしいな、推薦していこう。と強く思えた本です。

 

本の帯にはこうあります。「ずっと居場所がほしかった。~家庭や学校のつながりを失い、渋谷を彷徨っていた中高時代。やりたいことも夢もなくし、学校を中退。妊娠、中絶、DV、リストカット、自殺未遂・・・・・・。私の周りにはそんな子がたくさんいた」
仁藤さん自身、高校時代は月に20日以上も渋谷に出入りする「難民高校生」だったと語ります。これは彼女の造語ですが、家にも学校にも居場所がないとい感じる高校生を指します。ツイッターやネット掲示板などにも無数のつぶやきが漂う時代ですが、渋谷の街はそんな中高生が出会いを求める、メジャーな居場所となっています。

 

彼女は家族と仲が悪くて家に帰らない日もあり、先生が嫌いで学校に行かない日もありました。渋谷に逃げ込み、派手な化粧と服装で過ごしますが、「最近の若者はダメ」という大人にも「ダメ」な人が多いことを確認します。
渋谷の街は、危険な世界とも隣り合わせでした。若い女の子を連れ込んで働かせ、逃れられなくさせる罠がたくさんありました。この本には難民高校生の“その後”の事例がいくつも紹介されています。仁藤さんの友達や知り合いのその後の軌跡には言葉を失う思いになります。すさんだ生活から時には大人になっても抜け出せない構図が浮き彫りになります。

彼女はぎりぎりの土壇場で引き返せたものの、通った高校は2年で中退し、その後「高認」の合格を目指して予備校に通い始めました。そのカリキュラムで選択の機会の1つとして置かれていた「農園ゼミ」とその講師のある男性と出会えたことが、大きな転機となりました。
見た目や立場でなくひとりの人間として真摯に向き合ってくれる大人がいるのだ、と確認できました。自分の成長と幸福を願って声をかけ、問題提起し、考えさせてくれたのです。農園に毎週通い続けて2年半になり、農作業や収穫の喜びを知りました。初めは嫌だった土や虫にも慣れました。

またゼミの仲間と食糧問題や環境問題を学んで議論します。世の中には様々な問題があり、そこに関わって懸命に働く大人や学生が大勢いることを知ります。その解決のために動きたい、もっと勉強したいと思うようになります。すでに高認をくぐった彼女は、大学を受験して合格をはたしました。(明日へつづく)