第847回 Nコン2014課題曲に注目 ③

2014年2月28日

ゆっくりと春の気配が広がっています。花粉症の始まるのがつらい人達も少なくありませんが、春の訪れを楽しみに明日から始まる3月を迎えましょう。
在校生の皆さんは、来週の学年末試験を前にして試練の日々が続きます。納得できる成果をあげられるように、それぞれの粘り強い努力を願うばかりです。

 

Nコンの今年の課題曲が小中高とも魅力にあふれていたので、この通信で3回に分けて紹介させてもらいました。最終の本日はとても個性的な高校の部の課題曲を紹介いたします。『共演者』(作詞・小林香、作曲・横山潤子)~?のつくような不思議なタイトルの歌です。

作詞の小林さんは若き舞台演出家です。彼女のメッセージは印象深いものでした。
「人生は舞台である。舞台は開演したら必ず終演する。それは人生も一緒であり、もう始まってしまっているからいつか終わりがくる」との提起から始まります。「自分の心の奥底で思っていることに正直に生きていかないといつの間にか終演してしまう」ことを心に留めてほしい。「でもこれは役を演じなくていい舞台であり、この舞台で役を演じずあなたを生きるあなたにYesと」伝えたい。
あふれる情報の中で自分を見失わないで。自分の心に正直に生きる姿を応援したい。自分を否定するなら誰よりも早く自分自身を否定できるし、世の中はいろんな形で若者たちをネガティブな思考に追い込んでいる。負けないで自分の願いを認めて、キラキラして幸せになってもらいたい。

小林さんがこの歌にこめた強い願いです。合唱団の高校生や大学生との会話で次のようなやりとりがありました。次の珠玉のフレーズをめぐってです。
・・・・・・誰もあなたを分類できない
   定義できない 描き尽くせない
   あなたはあなたのままの主役♪・・・・・・

「この歌詞に惹かれるけど、今の世の中、自分にはこんな資格やスキルがありますとか進んで分類されないと認められないし、どこかで主役になれないではないか」、「本当の生きる目的は見つけるのは難しいし、役を演じなくていいなんてキレイ事ではないのか」という質問に対して小林さんは語ります。
「心の中まで誰も資格や試験で評価できない。自分はこういう人間なんだと誇りを保って生きていく中で、そこを頑張ってほしい。注意して欲しいのは、苦しい時こそあなたの近くにきっと共演者がいて、多分ひとりではないこと。」

 

この歌は、知的でおしゃれなフレーズがちりばめられ、本格的な四部合唱の展開は独創的です。最後の方で“各自の自由な選択が混じり合う”フォルテの仕掛けに驚かされます。『共演者』で惹かれた他のフレーズもあげてみます。
・・・・・・あなた いま 教室の窓から見つめているね
   自分を映す 青く果てのない鏡♪
・・・・・・私はどんな筋書きでも あなたの客席で観ています♪
・・・・・・ラベルを貼れないその命に 喝采を贈りたい
   ときには私 共演してもいいですか♪・・・・・・

小林さんは、自分は誰かの共演者になれるし、誰かが自分の共演者になってくれる、だから勇気を持って自分の人生に踏み出していこうと呼びかけるのです。この歌はそんな共演者、理解者からあなたへのメッセージなのです。

 

 

最後にこの番組の再放送についてお知らせします・3月21日(金祝)の午前9~10時にNHK・Eテレで放映されます。関心を持たれた方は録画視聴して頂ければ幸いです。