第1007回 現代の男性へ届ける知恵と励まし ①

2014年12月2日

後期中間試験の2日目です。

先週に続いて、今年読んだ中からお勧めしたい書籍を紹介させて頂きます。

『男子の貞操~僕らの性は僕らが語る』~坂爪真吾著(ちくま新書1067/2014年4月刊)という新書です。

書名からして恥ずかしくなりますが、卒業生や在校生の男子の諸君にまず届けてあげたいと思われました。またご両親など大人の男女の方々にも広く紹介する価値のある本だと考えられた次第です。

日常生活の中で特に若い男性が直面する、性に関する切実な問題とその解決策を分析し、性生活を通して人生を豊かにするためのスキルを身につけてもらうことをこの本は目的とする、と坂爪氏は述べています。筆者はNPOの世界で新しい“性の公共”を構想して、社会の性問題の解決に関わる仕事をしています。

 

性に関する情報が途方もなく氾濫する社会の中で、性行動の低年齢化が進む一方、若者の性的関心や経験率が実は低下している現実があります。若者たちがどのように性と向き合い、そこから実り豊かな人生を送るための果実を得るかという最も大切なことを語り合い展望を持てるようにしたいとして、性生活における諸問題の分析が始まります。

まずストレートに射精の問題から考察されます。性の商品化にもとづく膨大な性情報に振り回され、女性をモノ扱いするのに慣れ、特定の相手との中長期的な人間関係を築く力が弱まる傾向が考察されます。

性行動では「草食化」や「セックスレス」が注目される一方、様々なサブカルチャーにおける性表現は特殊に過剰に発達したのが日本の社会です。その中で自分自身が性の当事者として重要なことは何かが問いかけられます。

恋愛やセックスにあこがれ、劣等感の強い大学生が例示されます。「思春期のセックス・ブランク」が長く、その間メディアを通じて膨大な性の「記号消費の洗礼」を受け、周囲の女性への貧しい“採点・比較”でしか捉えられない傾向が説明されます。結婚しても不全感をひきずり、性生活を通してパートナーとの人格的な関係を深めることができない男性の姿も描かれます。

 

筆者は、最も必要なのは性の持つ多様な側面を見分ける力(リテラシー)を身につけることだと説きます。日本の社会は「セクシュアル・リテラシー」が極めて低く、教える&学べる場所が用意されてないことを踏まえて、そのための処方箋が分野別に提案されます。異性愛を基本的な対象とし、同性愛にも応用可能な内容として提示されていきます。(明日へつづく)