第1066回  “笑顔で生きる仮設住宅”~陸前高田の人びとから学ぶ ②

2015年3月5日

学年末試験の第4日目です。昨日のつづきをご紹介します。

中学3年生の熊谷君も仮設コミュニティーの主役の1人です。震災後の夏に入居した頃、89世帯全てのお宅を訪ねて挨拶し、“ラジオ体操を毎朝やりましょう”と提唱した少年です。友達2人と共に毎朝6時30分からの体操をリードし、参加者には「出席カード」を用意して可愛いシールを貼りました。

常連のおばさんが体調を崩して休むと、年賀状で再びの参加をお待ちしています、と丁寧な一筆を届けました。その手紙を宝物にしていますと語る石井さんは、デイサロンの中心で動く女性です。

その後、本人の高校受験を控えて自宅の再建が急がれることになり、引っ越しが決まります。龍之介君一家の「米中仮設卒業を祝う会」が集会所で開かれる場面も心温まるものでした。惜しまれて声援をいっぱい受けた龍之介君は“みんなに優しく接してもらって大きな家族のようでした”と語ります。住民の皆さんにとっては恩人の一人でした。

彼はその後も新居からラジオ体操に通いながら、何と“後継者探し”を始めます。ラジオ体操のつながりをここで失いたくないと、次世代のリーダー役を決めるのも自分の役目だと動いたのです。

二人の小さな後輩が名乗りをあげ、朝寝坊と戦いながら頑張る姿は微笑ましいです。餅つき大会で4度目のお正月を迎えた小学生の吉田君は、目覚ましを4つもかけて就寝し、真冬の早朝にラジオ体操へ馳せ参じます。また掃除の手伝いをして床の間の掛け軸を菅原さん宅へ率先して届けます。

“人が困っているときはお互い様だからね”と恥ずかしそうに話す愛斗君。おばあちゃんの励ましや皆の声援を受け、やんちゃで可愛い少年はしっかりと育っていました。

 

自治会長の金野さんには別の情報でも接しました。“千年に一度の津波だったし、この仮設の出会いも一度のものだから、後悔や悲しみばかりにしたくなかった”と語られます。始めは“その日暮らしで何もやることがなく、先のことを考えると不安ばかりで眠れない人も多かった”そうです。

「仮の暮らしには目標や楽しみが必要だ」とアイデアを出し合い、班長会議を重ねて無理のない範囲で実行していきました。朝のラジオ体操から夜の見回りまで、気がついたら共に出来る活動はとても広がりました。文化祭では、それぞれの趣味や特技を生かして様々な作品やパフォーマンスが披露されるまでになりました。

「卒業送別会」では、いつも出る人も送る人もさみしいと涙が出るけど、それぞれの新たな幸せに向かう仲間を、想い出と励ましいっぱいに送り出す場面を大事にしてきたのです。

「仮設を元気に卒業しよう」を合言葉に、楽しい住民活動を続ける米中仮設の人びと。こうして仲間意識を深めながら、日々の暮らしを充実させていく姿に学ぶことがたくさんありました。

住民の方々の生き方に接して、恵まれた環境にある自分達にはもっと出来ることがあるのではないかと問いかけられる思いになりました。