第401回 いま話題の映画と、とっておきの原作コミック

2012年2月14日

 映画『ALWAYS三丁目の夕日 ’64』が、いま注目を集めています。
 2005年の『ALWAYS三丁目の夕日』が大ヒットして数々の賞を得ました。2007年の『ALWAYS続・三丁目の夕日』は更に前作を上回る大ヒットとなりました。そして三丁目の懐かしい住民達が、東京オリンピック開催の年を舞台に、またスクリーンに帰ってきたのです。私もこのシリーズの大ファンです。この作品は映画館へ行って観なくちゃね!と妻とも話しています。

 この原作になっているのは、西岸良平著『夕焼けの詩』(小学館)という本です。一貫したストーリーでなく、様々な登場人物が出てくる「一話完結型」の作品です。30年以上も連載が続く長寿漫画であり、中学国語の教科書に教材として掲載されたこともあるそうです。作者の西岸良平氏は、鎌倉在住らしく『鎌倉ものがたり』も有名な作品ですが、マスコミに出ることはほとんどないという人物です。
 昭和の高度成長時代の前半期、ある下町を舞台にして、子どもや大人など様々な住民、謎の人物や動物まで多彩なキャラクターが登場します。その名前の一部は実在の人物や世相をもじることもあります。登場する本人や家族や仕事にはいろんな苦労や不遇があり、幸福を求めて懸命に生きる庶民の姿が描かれます。当時の社会や街の風景、流行した文化やグッズなどは緻密な考証をくぐり、精密に描かれます。リアリズムが基本ですが、時に幻想やファンタジーの世界に飛躍することもあります。何よりも個々の話のストーリーが面白くて小説のようなドラマがあり、懐かしい郷愁と感動に包まれ、一気に通読してしまう魅力があります。

 大学を卒業する頃、知人の先輩から「山田はアタマが堅いから、優れたコミックも読んで発想を柔らかくした方がいい」と忠告されて勧められたのがこの本でした。すぐに夢中になり30年以上愛読してきました。既刊約60冊のロングセラーですが全巻持っています。めったに漫画を読まない私ですが、この本は絶対に揃えると決め、今も新刊の発行を楽しみにしています。家族皆で回し読みをします。赤い背表紙がズラッと並ぶと見栄えがして、“家宝だよな”と思います。在校生や小学生の皆さん、保護者の皆様にもお勧めしたい、とっておきの名作です。