第379回 全校朝礼から~校長からの話

2012年1月12日

昨日の通信では、10日の全校朝礼のうち、部活授業関係の表彰事項を紹介いたしました。
今日は、その時の校長からの話について、これまで同様にご紹介します。
最後の方で、在校生の登下校に関わる藤沢市のアンケートの実施と協力の依頼、また来年度へ向けた国際教育・海外語学研修のプログラムの拡充について、概要を発表した部分があります。在校生保護者の皆様や、受験生・保護者の皆様にもご留意頂けたらと願っております。

【校長の話】
皆さん、おはようございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年は、3月に東日本大震災と福島原発事故が起こり、日本の社会の様子は大きく変わりました。そしてこの新しい年を迎えています。
その中で印象に残るニュースがありました。若い世代も年配の世代も、独身の人達の間で「結婚願望」が急に広がっている、深まっているとの報道がありました。また学校の「同窓会」がさかんになり、全国に散った昔の友達に連絡を送る代行の仕事が流行しているというニュースもありました。

ただでさえ職場や地域のつながりが弱くなっています。さらに大きな地震や事故に遭えば、当たり前だった暮らしも崩れてしまうことを、人びとは自覚しました。人生に強い不安を感じるからこそ、人間は一人では生きていけない、と感じるものです。心を託せる、安心して頼れる、親子や友人や連れ合いを求めるのです。人びとは、かつてなく「幸せ」について大切に考えるようになっているのです。
湘南学園の建学の精神は、「個性豊かに、身体健全、気品高く、社会の進歩に貢献できる、明朗で実力ある人間の育成」です。
学園で学び生活する皆さんには、この現在また遠い将来に、それぞれが揺るぎない「幸せ」を築いてもらいたいと思います。
現代の日本は「無縁社会」という言葉もあるほど厳しい、難しい状況も抱えています。でもそれにまけないで「個性豊かな」「明朗で実力ある人間」になり、自分にふさわしい人生の拠点と、たしかな絆をつかんで欲しいと思います。

今日はまず、昨年あるテレビ番組の紹介で出会った、一冊の本のことを紹介します。フランスのアランという人物が書いた『幸福論』という本です。アランは第一次・第二次の世界大戦をはさむ激動の時代に高校の先生を続け、執筆活動を続けた人です。
特に「人はだれでも幸福になれる」でも「そこには大切な心がけや努力が必要になる」というテーマで、人びとを啓蒙する様々な文章を書き続けました。その中からアランの金言を、3つのアドバイスを紹介してみます。

まず、「つらい時には遠くを見よ」という言葉です。
皆さんは、誰かに言われたことですごく傷ついたり、自分の欠点やコンプレックスに悩む事がありませんか。人生とは、いつもつらい事をいくつも抱えるものです。でもそこだけに囚われすぎても、解決の道は見えてこないものです。
今の自分の事だけを考え過ぎずに、人生という長い眼でとらえてみる。遠い過去を想い出し、遠い未来に希望を持つ夢を持つことで、道が拓けやすくなるものです。
いま抱える問題を、大きな全体の中で位置づけ直すには読書も有効です。アランはまた気分転換に身体を動かしたり、音楽を聴いたり、他の人のために動いていると心が軽くなるとも説きます。「ちょうど1年後の自分が、今の自分の悩みを覚えているだろうか、と問いかけてみるがいい」といったヒントを届けるのです。

二番目に、「人生の主役になれ」という、アランのメッセージを伝えたいです。
「つまらないお芝居を見ていると人は退屈する。しかし自分が芝居に出る時には、たとえつまらない内容でも退屈している暇はない。だから幸せになりたい人は舞台に上がらなくてはならない」とアランは例えます。
「名高い山の山頂まで登山電車で運ばれた人は、登山家と同じ感動で太陽を見ることはできない」とも例えています。「自分の土地を耕す農民はいくら苦労が大きくても幸福だ」が、「指示され命令されるだけの仕事は、どんな作業も苦痛でしかない」とも説明します。「本物の幸福」とは、自分の意志と行動に基づき、主役になって取り組み、苦しみも乗り越えてこそ達成できる、というのがアランの主張です。
関連してアランは、「不安や情念にまけない強い心をつくる」重要性を説きます。「悲観主義は感情によるが、楽観主義は意志の力による」という言葉にも惹かれました。「あらゆる不運やつまらぬ事柄に対して上機嫌にふるまってごらん。そうすると坂道があなたの足を鍛えるように、こういうささいな心配事すらかえって役に立つようになる」という一節もありました。ある年の始めには、「新年の贈り物として君が上機嫌であることをお祈りする。上機嫌こそはお互いが交換すべきものであり、みんなの心を、まず送る人の心を豊かにする礼節である」とも記しています。

最後に三つめの指摘です。「最大の人間的な楽しみとは、協働でやる、困難で自由な仕事であることは間違いない」というアランの指摘です。協同とは「仲間と共に」、困難とは「大変だけど乗り越えるやり甲斐があること」です。
そこで、お正月にテレビで観た二つの感動的な光景を紹介しましょう。

ひとつはあの箱根駅伝です。視聴率は実に30%に近い人気番組です。
私も二日間しっかり観ました。往路と復路を続けて観るので、この藤沢も通る全体のコースがだいぶお馴染みになりました。
ご存じの人も多いでしょう。今回は東洋大学が、昨年出た大会記録を更に8分以上も縮める、驚異的な最高タイムで完全優勝しました。
主将となった今年最後の柏原竜二君は、またも登り5区で区間新記録を更新しました。のみならず全部で10人のうち6人もの選手が区間第1位となりました。「柏原君に依存」と言わせずに、新人も含む全員の力走で優勝したのです。
前回の箱根駅伝はわずか21秒差で早稲田に敗れた東洋大チームは、そのリベンジを誓い、「1秒を削り出せ」をテーマに翌日の1月4日から猛練習を重ねました。連日毎朝5時スタートで、朝夕で4時間前後も皆で走り込みを続けたそうです。一人一人が「任された区間を最初から最後まで飛ばし切れる」力を養ったのです。大手町のゴール前でアンカーを待つ、部員達の表情を想い出せますか。本当に晴れやかで歓喜にあふれていました。視聴者にも感動と元気を分けてくれました。

もうひとつ紹介します。『世界一番紀行』という番組で「世界で一番大きなパレード」という特集がありました。ブラジルのレシフェという町のカーニバルです。昔は奴隷貿易で栄えた赤道近くの港町です。市民は白人・黒人・先住民や混血など民族も肌の色も様々です。そこで毎年3月に巨大なパレードが実施されます。踊る人も歌う人も、楽器を奏でる人も、裏方の人びとも、ワクワクしながら練習と準備に燃えて、本番の3日間を迎えるのです。
5キロに渡るパレードとその周りは、何と200万人の人びとで埋め尽くされます。「このパレードに参加する時ほど人生の幸せを感じることはない」「この場に一緒にいる全ての人びとを仲間と感じ、大切に思う」と参加者は笑顔で語っていました。「この祭りには毎年来る。人生にかかせない大事な体験なんだ」と観客も語ります。日本からこのパレードに参加した俳優の大高さんは、「200万人の人達が幸せになれる奇跡の時間だった。幸せとは独り占めするものでなく、みんなで共有するものだと感じます」と最高の笑顔で語っていました。

箱根駅伝とレシフェのカーニバル。舞台は華やかですが、ここにも私達の人生につながる大切なヒントがあると思います。
それはまず仲間と目標を持って、力を合わせて取り組むことの素晴らしさです。
そこには手応えがあり、友人の再発見があり、幸福への道筋があります。
今月の26日に待つ合唱コンクールは、皆さんにとってまずその大切な舞台です。私も毎年、皆さんが繰り広げる素晴らしいドラマに深い感動をもらってきました。今日から本番まであと16日です。様々な壁にも直面するかもしれませんが、一人ひとりが主人公の気持ちを持って困難を乗り越え、自分達が選んだ歌の世界をきわめて、最高のコーラスを披露して欲しいと願っています。

もう一つは、具体的な目標を持って地道に頑張ることの大切さです。
皆さんのひたむきな努力は、教科の勉強にこそまず向けられるべきだと思います。今日の朝礼には、高3の先輩諸君はいません。すでに推薦入試などで進学を決めた人達もいますが、大部分の先輩達は、今週土曜日と日曜日に実施される「大学入試センター試験」の受験を控えています。そして2月、3月へと続く長い期間にわたり、最後のラストスパートをかけて戦っていくのです。
センター試験は全国で約60万人の受験生が同時に受験します。皆さんの大部分も、高2の諸君は一年後に、他の学年の皆さんは数年後にこの試験を受験することになります。
学園で学ぶ6年間に、目指す大学に合格できる高い学力を身につけていくことは、皆さん一人ひとりに課せられた基本的な課題です。
皆さん、今年を本気になって「学力大躍進」の一年にしていきましょう。
まずは、3月に行われる最後の学年末試験に大勝利できるよう、具体的な目標を掲げて、時間をかけた勉強に取り組んでいきましょう。

最後にここで、お願いと連絡があります。お願いは、学園に通学する皆さんへの、地元・藤沢市の機関から依頼されたアンケートについてです。
学園の全校生徒は1100名以上いますが、多くの諸君が、小田急線の鵠沼海岸駅と江ノ電の鵠沼駅を毎日利用しています。特に海岸駅は全体に狭くて改札口も1つしかなく、先生方の登下校指導や皆さんの心掛けもあって一定の秩序は保たれていますが、安全面や地域住民の方々へのご迷惑を考えると、混雑解消のための方策が期待されています。
その方向性を決めるために、在校生の皆さんや教職員の意識調査が必要と判断されました。簡単な内容ですが、皆さんには来週月曜日に各クラスで回答してもらいますので協力をお願いします。

もう一つは皆さんへの朗報です。来年度から、国際交流、海外語学研修のプログラムを更に拡げることにしました。
これまでカナダセミナー、韓国セミナー、オーストラリアセミナーを運営してきました。これらに加えて来年度から「イングランドセミナー」と「韓国英語村ツアー」を新たに導入します。また従来の韓国セミナーは、お隣の中国へも少し足を延ばす内容にして「韓国・中国セミナー」へと拡充します。
グローバル化が急速に進む日本と国際社会だからこそ、未来の社会を担う皆さんには、早くから海外へ出かけて現地の人びとと交流し、異なる文化の理解やコミュニケーションの力を深め、同世代の海外の友だちを拡げて欲しいと願うからです。その上で、将来の目標や「こだわりの第一志望校」を高く掲げて、元気に勉学を頑張っていって欲しいと願っています。
またいずれ詳細をお伝えしますので、楽しみにしていて下さい。
それでは以上です。ご静聴をありがとうございました。