第349回 絵本作家の卒業生にお会いする

2011年11月19日

 今日は、ある卒業生のことを紹介したいと思います。
 佐々木貴行君といって、幼稚園から高校まで湘南学園で学んだ、いま30代前半の方です。先日、久しぶりに学園を訪ねてくれた佐々木君は、母校の東京工芸大学の広報課のお仕事で、センスあふれる学校案内を持参して広報の説明に来てくれました。
 一方で彼には別の肩書きがあります。イラストレーターであり、絵本作家なのです。彼のデビュー作品『花火の夜に』は、三年前に第7回ART BOX 絵本新人賞を受賞しました。佐々木君から贈呈されたこの絵本は、子どものワクワク、ドキドキする気持ちを、美しくシンプルな絵とストーリーの中に温かく表現した、とても素敵な絵本でした。待ちに待った花火大会を前に子ども達はおばあちゃんの家を目指し、ふいにドーンと花火に出会います。ときめきの不思議な時間の描写が見事です。誰もがこんな感動を大事にして欲しいし、大人も振り返って共有したいものです。

 佐々木君は、中高時代は剣道部の主力選手のひとりでした。学校行事や音楽ではいつも賑やかな輪の中に彼がいました。明るく剽軽なようで、繊細な部分や思いやりも持つ印象的な生徒でした。大学卒業後は、グラフィクデザインや広告代理店の仕事を歴任し、その間自分の作品を世に示す個展も重ねて注目を集めました。そして念願の絵本の制作でついに大きな成果をあげたのです。
 この間、佐々木君はご自分のご家庭を築かれます。父親になられた彼の願いもこの絵本にはこめられています。「僕にとって絵本は親子でコミュニケーションをするための1つのツールだと思っています」という彼のコメントに接しました。幼稚園の時に読んだある1冊の絵本との出会い。幼い子どもの心に鮮明に届く絵本の力を理解し、自分もそんな絵本作家になりたいと考えたそうです。
 同期の学園卒業生の友人には、笹浦暢大君という演出家、演劇の専門家もいます。笹浦君は「えほんをよむ」会を主宰し、佐々木君とコラボで朗読劇の公演を展開されていることも知りました。
 佐々木君は、小さい頃は江の島や周辺でよく遊び、江の島の花火大会に親しみ、高校時代は友だちと自転車でよく海岸線を走り、夢を語り合ったそうです。幼稚園から高校まで学園での様々な出会いと体験が、現在の僕を形成してくれましたと語っていました。「湘南は僕にとっての原点です」とも書かれていました。

 佐々木貴行君のブログも、ぜひご覧になってみて下さい。久しぶりに会った彼は、温もりのある人柄がよく伝わる、気配りの素晴らしい青年でした。勤める大学の仕事も丁寧で行き届いたプレゼンぶりに心をひかれました。卒業生として、また父親としての話しぶりにも魅力があり、湘南学園生らしいフレンドリーな雰囲気が印象的でした。今後のますますのご活躍を期待し、学園とのつながりの中でもこれから大きなお力添えを戴けることを期待しています。