第1377回 真のIntelligence

2018年5月18日

5月15日、爽やかな青空の下、中高体育祭が実施されました。本校の体育祭は生徒諸君が主体となって企画、運営される伝統行事です。私も個人的には思い出に残る体育祭がいくつもあります。生徒諸君にとってとても大切な行事であると同時に、私たち教師の心にも温かな思い出として残るビッグイベントです。

実行委員長の戸塚凜さんを始め、招集係、決勝審判係、得点係、用具係、保健係、放送係そして各色のリーダー諸君・・・・彼らがそれぞれの立場で「やるべきこと」を考え、チームで議論し、実行するわけです。この生徒諸君の力で創り上げる湘南学園体育祭には、生徒の文化があります。主体は生徒。教師たちは協力者なのです。

さて、今年の体育祭にもいろいろなドラマがありました。今日はそのドラマの一つをご紹介します。

・・・体育祭プログラムの先頭は、各色対抗の集団演技(タイトルは「とびだせ!COLORS SOUL」)でした。中1~高2の縦割りで編成される赤組、黄色組、緑組、青組、黒組の各チームが、集団演技(パフォーマンス)をする場であり、これがこの体育祭の目玉種目の一つになっています。みんな真剣です。
工夫が凝らされた各組の発表が次々と展開されていく中で、ハプニングが起こりました。

演技の途中で、音楽が突然止まってしまったのです。
・・・どうしよう・・・当該の組の諸君はきっと不安になったと思います。
・・・かわいそうだよ・・・・周囲の生徒も心配していました。

その時・・・私の心を打ったのは・・・、生徒諸君の冷静で落ち着いた対応でした。

当該の組の生徒諸君にしてみれば、「せっかく練習してきたのにこんなことになるなんて・・・・」という気持ちになっても仕方のないことなのに、彼らはじっと落ち着いて待ったのです。誰も騒がず・・・。誰も取り乱さず・・・。イライラせず・・・。

・・・再度、音が出るまでの間・・・彼らは、じっと待ったのです。本部の実行委員諸君の対応を信じて、静かに待っているのが分かりました。

私は・・・、この様子を見て・・・、湘南学園の生徒諸君相互の信頼関係や絆の強さを感じたのです。そこに流れる空気がとても温かなものであり、胸が熱くなりました。

このときの本部テントの実行委員諸君の対応は冷静で的確でした。即座に音声が止まった原因を突き止め、解決するために迅速に、そして丁寧に行動していました。
私と言えば・・・生徒諸君がその状況に対応するその様子をじっと見ていました。すべてが合理的であり、最速、最良でした。

 こうした冷静な対応をすることが出来る彼らの力に、私はintelligenceを感じたのです。

一般に、intelligenceというと、とかく知識や情報量のことに目が向かいがちですが、intelligenceとは、「ある場面に遭遇した時に、どれほど冷静に的確に判断することができるかに関わる力」なのです。自分の持つ能力や情報を駆使して、総合的にしかも瞬時に判断して行動する力なのです。必要なのは、知識や情報量だけではないのです。観察力や判断力、集中力、それを支える善意なのです。

少し前のお話になりますが、ある最難関の国立大学の英語の入試問題にこのintelligenceをテーマにした出題がありました。

以下のような問題でした。

(1) まず、intelligenceとはどのようなものなのかを筆者が論じ(もちろん英語で)、これを受験者が読みます。
(2) そしてこの筆者が述べるintelligenceに触れながら、intelligenceに関する受験者の考えを、自身の過去の経験を踏まえて述べる。

迫力のある良問でした。
この大学(筆者)が論じるintelligenceを一言でまとめるならば、「危機に直面した時にどのように対処できるかを問う力」でした。

さて・・・この体育祭で、彼らが見せてくれたintelligenceは偶然だったのか?

私は、偶然だったと見ていません。
なぜか?

それは、「自分たちの力で体育祭を創り上げてきたからこそ」だったと思うのです。

もし彼らが、人に指示されたことだけやって・・・ということであれば、こうした瞬時のひらめきや判断をすることは出来なかったのだと思うのです。まさに彼らはこの体育祭に主体的に関わっていたのです。この体育祭は、学校が押しつけたものなのではなく生徒諸君が創り上げたものであるということが証明された瞬間でもありました。

本校の生徒諸君には、真のintelligenceがあるのです。すてきな若者たちです。



 最後に・・・
近隣にお住まいの皆様、

この度は、体育祭の準備期間も含め、さまざまな点でご迷惑をおかけしました。心よりお詫び申し上げます。
また暖かく見守って下さいましたことに、心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。