第587回 大学生の就活~「12月解禁」最前線の中で

2012年12月14日

 再来年の春に卒業予定の大学3年生の就職活動が、12月1日から本格的にスタートしました。主要企業の広報活動の「解禁」が従来より2か月遅くなって2年目になります。その初日に東京ビックサイトで行なわれた合同会社説明会には、240社が参加し、2万数千人もの学生達が来場したそうです。
 ある有名大学では、3年生向け就職ガイダンスを受けた約6千人にエントリーシートを書かせ、外部委託で添削したそうです。同大オリジナルの「就活手帳」を数百万円かけて約8千部作り、皆に配布したそうです。10~11月に企業側の採用担当者や
OBとの座談会、業界講演会などを行う大学も増えているそうです。

 来春に卒業予定の大学生の就職内定率は、10月1日現在で63.1%、前年同期比で3.2%増だったそうです。採用抑制からの改善傾向も少しずつ見られるとの指摘があり、「何が何でも大手」との幻想を求めず中小にも目を向ける学生が増えてきた反映があるとも指摘されます。しかし20~30社も廻って内定を得られない学生達は依然多く、日中関係の悪化なども受けて、新卒採用よりも「会社存続が最優先」の企業も少なくないとの情報も多いようです。就活支援の塾やセミナーが増加してトラブルが目立っているとの記事にも接しました。

 関連して、最近読んで衝撃を受けたある本を紹介します。『ブラック企業』(今野晴貴著・文春新書)という本です。「ブラック企業」という言葉は、自分の息子が就活をしていた2年前にも、友人どうしで頻繁に話題になっていると聞いていました。違法ないしは違法すれすれの雇用形態で若者を酷使する企業のことを指します。
 筆者は、NPO法人を起ち上げて多数の若者の労働相談を受ける29歳の若き研究者です。大量募集と選別、使い捨ての実態が克明に明かされます。個人的被害としてだけでなく、社会問題としてこのテーマを深く実証的に掘り下げ、日本社会に警鐘を鳴らします。正社員の座を勝ち取るべく奔走する若者達に、正しい認識と対処行動を求めます。
 従来の「日本型雇用」に存在した傾向が、変質する経済環境の中で悪用されてきた経過をリアルに追跡する筆者の力量に脱帽です。具体的な企業名の掲載と推定があるので強くは推薦できない部分もありますが、在校生と卒業生の「いまとこれから」を取り巻く状況について理解を深め、思いを寄せました。問題の本質を語り合えるため、自衛して道を拓くために広く一読を、と紹介させて頂きます。