第636回 エイミー・マリンズさんの生き方

2013年3月5日

 学年末試験の第2日です。今日は最近観た、ある素晴らしい講演についてお伝えします。この通信でも紹介したことのある、NHK教育テレビ『スーパープレゼンテーション』からです。

 エイミー・マリンズさん。ニューヨーク在住のモデル・女優であり、華やかな美貌は静かな自信に満ちています。有名雑誌の表紙やファションショーなどで引っ張りだこであり、欧米各地を飛び回る売れっ子です。

 実は彼女は、2012年ロンドン・パラリンピックで米国選手団の団長を務めました。元陸上選手で義足のアスリートであり、短距離や走り幅跳びで好記録を持っています。彼女は、1998年のTED講演会で、生い立ちから現在までの人生をスピーチし、圧倒的な感銘を聴衆に与えて注目されました。

 彼女は両脚の骨の一部を持たずに生まれて、1歳の時に膝から下を切断されました。しかし義足をつけて活発に動き回る少女はすくすくと成長し、筋肉も義足を前提に発達し、運動神経と負けん気に優れた彼女は、大学では陸上選手として頭角を現しました。強烈な想い出となる、ある大会のエピソードを彼女は紹介します。

 すごく暑かったその日、義足を付けた所に汗がたまり、100m走のゴール前では脚が上下に動いて義足が脱げそうになりました。5千人もの観客を前に恥ずかしくて死にそうな思いになり、30分後の200m走は棄権したいとコーチに申し出ました。
 すると思わぬ返事が来ます。「エイミー!義足が脱げたって何だ。拾って履いて走ればいいんだ!」と。おかげで逃げ出さずに済んだの、と語るエイミーは、TEDの聴衆の前で義足の付け替えもして、赤裸々に前向きに自然体で語り続けました。心を揺さぶられ、スタンディングオベーションで応えた聴衆の中にある雑誌編集者がいました。エイミーと知り合いになりたい、彼女のことをもっと知りたいと追い回し、彼女の姿は著名雑誌の表紙を飾ります。
 それからエイミーの生活と運命が大きく変わったのです。一躍有名になった彼女は、自分の使命を自覚して仕事に臨み、発言していきます。

 社会的なチャンスに恵まれたエイミーは、その軌跡の教訓を次のように表現しています。・・・・・・“勇気を出して自分をさらけ出せば、必ずまっすぐに応えてくれる人たちがいる”と。この言葉の重み、説得力がずしんと心に残りました。(明日へつづく)