第642回 学園生活の門出を祝う感動の式典

2013年3月12日

 春もようやく本番のようです。気温の乱高下を伴いながらも確実に暖かくなってきました。花粉症が今回は激烈なのがつらいところですが、何とか耐え忍ぶしかないようです。
 昨日と今日は特別時間割に沿って学園末試験の答案返却と解説が進められています。本日は、先週土曜日の高校卒業式の様子について、ご紹介いたします。

 卒業生一人ひとりに卒業証書を授与するのは、それぞれ短くも精いっぱい心をこめようと思います。皆出席賞授与は1年間、3年間と続き、中高6年間皆勤は19名もいました。更に小中高12年間皆出席を達成した三名、山田聖来さん、中山亜弓さん、畑山礼くんの時にはひときわ盛大な拍手がわきました。この達成の背後にどれだけ親御さんのご尽力があったか、本人がどれだけ耐え忍ぶ日々もあったかと思うと、不覚にも読み上げにつまるほど心が震えました。
 新たに特設した「学園長賞」では二人の対象者がいました。大脇ひとみさんは書道部員として数々の全国大会で上位入賞し、書写検定では全国首位の受賞を祝してです。石津貴士君はハンドボール部の関東大会出場をキーパーとして支え、国体の県代表選手にも選抜された実績を祝してです。

 在校生代表・高2井島貴宏くん(現総務副委員長)の送辞では、入学して何も判らない自分達をリードし、悩みや相談事も親身に聞いてくれた先輩方への謝辞に始まり、生徒会執行部で、全員参加の行事をどう創り上げるのか、課題山積の中で工夫を凝らし、真剣に話し合いを進める姿からいつも見習っていたこと。全体を動かす高2となって改めて責任感の重さや後輩への指示を出す難しさを知り、先輩達の苦労をより深く理解したこと。部活動や生徒会行事などを通じて培った縦のつながりが学園の素晴らしさの1つであり、次の後輩達へ引き継いでいけるよう努めたいことが語られました。それぞれ違う道へ進む先輩達は学園時代の経験も生かして様々な困難を打ち破って下さい、憧れだった先輩方へ少しでも近づけるように自分達も新たな一歩を踏み出したいと述べていました。学園生徒会の伝統を受け継ぎ、伝えていく使命感が伝わってきました。
 卒業生代表・八田有里さん(元総務委員長)の答辞では、先生方や両親への深い感謝が述べられ、後輩の皆には何か残すことが出来たかと自問しつつ、時間を大切にたくさん悩み笑い学び、多くの事を後輩に伝えて欲しいと語られました。日本と世界でグローバル化が加速し「日本で生きることは世界で生きることと同じ条件になってきている」ように思える中、この学園で自ら行動することを学んだ、と主題に入りました。大震災が発生したあの夜、皆で力を合わせて被災地の方々に手を差し伸べようとのメールが多数自分に届き、その後チャリティーコンサートの開催を実現したことを例にあげ、どんな時にも周りには仲間がいる、強い気持ちと団結力があれば大変な時でも立ち上がれる、学園生活の様々な場面で自分達のパワーと絆を活かして達成感を持てた。ここでの経験を忘れずに胸を張って日本、世界へと羽ばたいていこうとの表明がずしんと心に響きました。今後も学園は私たちの温かい故郷であり、壁にぶつかる時にはこの故郷を思い出して前を向き、明るくまっすぐに歩み続けましょう!という呼びかけが、会場の皆さんに深い感銘を残しました。

 卒業生からの提案で、今回は久々に学年の歌が披露されました。あの『3月9日』(レミオロメン)です。日付で一致した幸運にも恵まれ、学園生活の想い出を編集した素適な写真集が大スクリーンに映される中で歌ってくれました。
 例年通り吹奏楽部の皆さんの演奏と、生徒会総務委員諸君のサポートも受けて、会場を去る卒業生諸君と学年会スタッフを見送り、お祝いの拍手が続きました。卒業生たちが学年の先生方の前を通り過ぎる際は、感動的な交歓の場面が長く続きました。女子も男子も多数の諸君が泣いているのも印象的でした。
 その後、クラス毎に生徒諸君と保護者の方々も一緒の記念写真撮影、そして最終のHRがありました。クラブごとの送別会なども毎年恒例になっており、長時間の和やかな会がいろいろと盛り上がったようです。今年も実に多数の卒業生諸君がこの日に合わせてお祝いに来てくれ、感心するばかりでした

 夜の「卒業を祝う会」も盛大でした。卒業生諸君から、アカペラ・フラダンス・コント・ダンスなど多彩なパフォーマンスが披露され、学園教員からのメッセージや保護者の方々との懇談や写真の輪が広がり、抽選プレゼントの豪華賞品にも驚きました。学年委員の方々を始め保護者の皆様方には、この祝う会も含めてご準備とご参加ご尽力、誠にありがとうございました。

 最後に、卒業式における校長式辞を、今回もご紹介させていただきます。

卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
本日の、湘南学園第61回高等学校卒業式には、学校法人を代表して、理事長の辻様、PTAを代表して、PTA会長の浦田様、そして全学を代表して、仲本学園長先生、以上の方々のご列席を頂いております。謹んでお礼を申し上げます。

卒業生の皆さんと湘南学園との関わりは、6年間、あるいは12年間、14年間の長い年月にわたりました。先ほど皆出席賞の授与を行いましたが、今回も対象者の多いことに驚きました。中高6年間を皆勤した人が19名、小中高12年間を皆勤した人は3名もいました。この冬の指定登校期間に入ってからも、ほぼ毎日登校して受験勉強を続ける人たちが少なくないことに、いつも感心していました。
先日、高校3年始めの学年通信を改めて読んでみました。そこには「自分の願う未来に近づく」という第一のメッセージが送られていました。皆さんは、「自分の願う未来」「なりたい自分の姿」を、時にはしっかり温め直しながら、ここまで勉学に励んできたことと思います。それぞれが目指す“高き山”に登るべく、友だちと声を掛け合い支え合って頑張ってきたことでしょう。
現時点においては、皆さんの立場には違いがあります。第1志望の大学や専門学校に合格して心はずむ人たち、まだ大事な発表を待つ人たち、そして今回は届かずに来年の春へ向けて捲土重来を期す人たちに分かれています。この差は今はたしかに大きいものですが、人生はこれからが長い道のりになります。この先には、人生の大きな方向を決める重要な岐路がいくつも待っています。その節目節目で皆さんはそれぞれ自分の気持ちを固めて、大事な進路を選んでいかなければなりません。

この学年の皆さんに関わる想い出で、私が一番鮮烈なのは、高2の体育祭の時でした。GWが過ぎて特別時間割に入った直後の、皆さんの見事なスタートダッシュが印象的でした。そこまで各クラス・各色の人たちはさぞ入念に話し合って準備したのでしょう。後輩達の学年のクラスに入って指示や指導を行う時間を無駄にはできない、限られた時間を有効に使おう、という強い自覚が伝わってきました。体育祭の当日も、全体の運営や時間の管理は素晴らしく、次年度へ向けての継承と改善において、大きな前進をはたしてくれました。
学校行事・クラブ活動・特活・国際交流など様々な場面で、その時々の主役になる人たちがいろいろと代わって活躍していた様子が印象に残っています。
学年の先生方はいつでも、「自分達で考えて、主体的に取り組んでいく」「自分の頭で判断して、自分の意志で選択する」ことを求めていたように思います。その期待に応えて皆さんはこの学園で大きく成長し、これからにつながる力を蓄えてきたと信じています。

皆さんへの最大の願いは、たった一度の自分の人生を愛おしみ、大切にすることです。それぞれが選んでいく人生の舞台で、揺るぎない幸せを築いていくことです。時には希望を修正したり、挫折や失敗も糧にしながら、生涯につながる幸福を築いていってほしいと願っています。
東日本大震災の勃発から、あさってでちょうど二年になります。あの時の大変な経験はしだいに風化していく傾向もありますが、被災地の復興へ向けた懸命の努力や、もう故郷に戻れない不安を抱える人びとが懸命に暮らす姿には、その気になれば、様々な媒体を通して、たくさん接することができます。当たり前だった日常生活が数多くの人たちに支えられている有り難さ、家族や友人との絆やつながりの尊さについて、私たちは以前よりも遙かに心深く受けとめることが出来るようになったはずです。
皆さんもご存じのように、いま日本と国際社会は、グローバル時代に伴う激しい競争と様々な問題にも直面しています。この先皆さんを待っているキャンパスライフは、全国から集まる新たな出会いに満ちた楽しい時代です。でもその先には就職という課題があり、先輩達が過剰な「就活」の圧力にさらされ、例えば「ブラック企業」の実態などが話題になる現状を、皆さんは一定の不安を持って見守っているのではないでしょうか。
私たちの若い頃は、携帯電話もインターネットもありませんでした。現代の社会は瞬時に世界の情報が入り、見ず知らずの人とも会話ができる便利な時代です。しかし直接に人間と人間が向き合って対話をする、という人間関係の基本が、逆にその分貧しくなったり億劫になってきている状況が指摘されています。あり余るモノや情報に囲まれながら、孤独や閉塞感に悩む人たちが増えて、家族や地域に寄る辺のない「無縁社会」の様相が広がっている、とも指摘されています。

卒業生の皆さん、そんな世の中だからこそ「自分の願う未来」にこだわりましょう。あなたが輝く場所、自分の能力や持ち味を発揮できるポジションを、息長く地道に探していきましょう。職場、地域、家庭など自分の生活の拠点は、いずれ必ずつかむことが出来ます。いろんなきっかけや偶然からも道は拓けていきます。
この世の中には素晴らしい人たちが大勢います。尊敬すべき生き方や仕事、その人たちのつながりが網の目のように社会に広がっています。そこにしっかり目を向け、自分から出会いを求めていきたいものです。そして自分の良さを実現し、新たなつながりに感謝し、人目を気にし過ぎず、楽観的に生きていく力を身につけていきましょう。
そのためにも時代の新しい趨勢や動向にはしっかりと目を向けることです。岐路に際して騙されないための見識を身につけ、生活の切り替えの力、心身の安定を守る力を養っていきましょう。
最終的に自分が選んだ道を、希望を抱いて進んでいくことが生活の土台です。「これで良かったんだ」という振り返りが出来ること、自分がたどってきた道のりを肯定して統合することが大事になると思います。その場を拠点にして新たな夢や目標を持って生きていくことが幸福を築く道筋になります。
昨年も紹介した『手紙屋』という本のメッセージを再び掲げたいと思います。
・「人間は、逆境の数だけ強くなれる」
・「どんなつらい出来事も自分を成長させる糧に変えられるし、その経験がなければ手に入れられない成功
  を実現する意志を持ちたい」
・「人生の目標を持つと必ず壁が現れる。その壁はその人がより良く生きようとする時に必ず現れる。それ
  は自分が頑張ろうとする証でもあり、あなたが決める生き方に応じて目の前にやってくる」
・「だからまず大切なのは、目の前の課題に対して懸命に力を注いで生きることだ」・・・・・・
と記されています。

卒業生の皆さんはこの湘南学園で、友人や同級生、先輩達や後輩達と力を合わせて様々な活動に取り組み、貴重な経験をいっぱい重ねてきました。そしてこの春または来年春から、新しいキャンパスでの生活が始まります、そして数年後には、様々な仕事のステージで、新たな出会いを得て生活していくのです。
つらい時には、遠くを見すえながら、人生の主役であり続けましょう。
困難な時こそ学び続けることが重要です。仕事の大変さや人間関係に悩む時、新たな立場や事業を前にして重責に悩む時は、同僚や友人や先輩の助言を求めることが大切です。同時に自分の抱える問題を、より広い視点や背景のもとで理解し直し、どんな方向で努力をするべきなのか認識する、自分の理性を鍛えることも重要です。一冊の書籍から知恵と光をもらい、出口が見つかることもあるものです。
「社会の進歩に貢献する、明朗で実力ある人間」。これが本校の教育目標です。
皆さんも私たちも、同じ時代に生きる仲間として、もっと生命や環境を大切にする、「持続可能で温もりのある社会」の実現へ向けて出来ることを進めていきましょう。皆さんには、どこへ行っても広く周りを見て好奇心を発揮し、自分から進んで声をかけ働きかける、積極的な生き方を心がけて頂きたいです。そして自分の興味ある分野で専門性を磨き、学習を忘れずに切磋琢磨しましょう。新たな協力関係を広げて、社会の進歩に貢献できる充実した人生を築いて下さい。

この秋には80周年記念館が完成します。独自の理念を持つカフェテリアがスタートし、卒業生の皆さんが憩える新たなスペースも確保されます。皆さんの在学中に間に合わなかったことをお詫びするばかりですが、どうかどんどん利用して下さい。この秋には80周年記念のイベントでホームカミングデイの機会も設けますので、さっそくご来園してもらいたいと願っています。湘南学園は、皆さんの大切な母校であり続けたいと思います。どうかいつでも気軽に遊びに来て下さい。
どうか皆さんお元気で! 以上で、私からのお祝いの言葉といたします。

 ※ 明日から年度末の諸会議や報告会、学年末面談や科目別指導などの日程が続きます。
  校長通信はお休みをいただき、次の全員登校日にあたる22日と23日に再開いたします。