シリーズ:ピーターラビット 第1回ピーターラビットの世界にようこそ

2016年5月26日

 ピーターラビットのお話は初版本が出版されてから100年以上が経過していますが、国を超え、時代を超えて世界中の人々に愛されています。実は、このブログの筆者も大のピーターラビットファンで、ピーターラビットの世界に日々どっぷりつかっています。ということで、今年4年ぶりに改訂されたNew Crown 中学2年生の教科書でPeter Rabbitを見つけたときはとてもうれしく感じました。ただ教科書の内容を生徒に伝えるだけでなく、どうしたら時代背景等も含めて生徒により広い視野でピーターラビットの話を見ることができるようになるかが重要です。

 

 

Lesson 2 Peter Rabbit

 

文法事項:be動詞の過去形was/were

過去進行形(was/were + ~ing)

接続詞when

 

授業時間:まとめテストを含み7時間

 

 

 

実際の教科書と関連グッズ:アニメ版のDVDを授業で見ました

 

まずは、Peter Rabbit誕生の背景から。作者のビアトリクス・ポターは病気がちだった少年ノエル君に手紙を書きました。この少年は筆者の家庭教師の息子さんで、両家は長年家族ぐるみの付き合いがありました。その手紙は幸運にも現存しており、「ノエル君、あなたに何を書いていいのかわからないので四匹の小さいウサギのお話をしましょう。四匹の名前はフロプシーに、モプシーに、カトンテールに、ピーターでした…」という書き出しで始まっています。ピーターラビットのお話もともと手紙だった、ということで日本語の「だった」に当たるbe動詞の過去形was/wereを学習します。これがPart1です。Part2では登場人物2人の会話になっており「昨日図書館でピーターラビットを読んでいるところでした。」で過去進行形を、「若いとき私もピーターラビットを読みました。」の部分では接続詞のwhenを学習します。

ノエル君にあてた手紙の実物:残っているのが何よりの幸運だ

 

この単元の最後には、ややシンプルにリライトされたピーターラビットのお話(The Tale of Peter Rabbit)を読みます。ここでは文字面を追うだけの読み方でなく、物事や時代の背景を考えながら読んでいきます。以下に授業で扱ったポイントを解説していきますね。

 

ピーターのお父さんはマグレガーさんにパイにされてしまった!

この文章を読むと生徒が必ずいうのが「残酷」。確かに現代の感覚からすると可愛いウサギさんを食べてしまうのは残酷ですが、これはあくまで現代の感覚です。ピーターラビットのお話が手紙となって世に登場したのが1893年、正式に出版社から初版本が出版されたのが1902年です。この当時は庭で買っている生き物を屠殺して食べることや、狩りで動物を捕まえて食べることが日常でした。日本でも戦争を知っている世代やそのお子さん世代(ちょうど団塊の世代あたりくらいまででしょうか?)にとってはこういった行為は日常だったのではないでしょうか。現代おいて屠殺という行為は人々の日常から遠ざけられ、かえって人々が「命をいただいている」という感覚を忘れがちになっている現実もあります。そう言った意味で、ピーターラビットにでてくるこの文章は現代人に多くの示唆を与えています。


 

 
ピーターがパセリを探していたとき…

教科書の中ではなぜピーターがパセリを探していたかの説明が省略されていますが、原作ではラディッシュ(はつか大根のこと)の食べ過ぎで具合が悪くなってしまうという描写があります。病気でパセリ?そうなんです。パセリは長らくヨーロッパで腹痛に効く薬草として用いられてきました。授業でここまで説明したところ生徒から「ハンバーグやステーキの付け合わせでパセリが出てくるのはもしかして…」という声が上がりました。その通り。肉で食あたりにならないようにパセリを付け合わせていたんですね。


 

 
お母さんがカモミール茶を作ってくれました。

みなさんカモミールをご存知ですか?庭で栽培されている方も多く知っている方も多いのではないでしょうか。独特の香りがあるあの植物です。カモミール茶はどうでしょうか?飲んだことありますか。最近だとファミレスチェーン店のドリンクコーナーに置いてあることもあり、割と親しまれていますね。では、なんでピーターのお母さんはカモミール茶を作ったのでしょうか。文脈を見てみるとピーターがマグレガーさんに追いかけられヘトヘトになって家に帰ってきたあとにこの文章があります。カモミール茶に含まれる成分には鎮痛消炎作用とリラックス効果があるということがヨーロッパでは知られていました。なので、寝る前のリラックスの一杯!ということでカモミール茶なのですね。


 

 
こう考えてみるとピーターラビットの世界もなかなか奥が深いです。ただ、物語を読むだけではもったいない!隠れた背景や時代を読み解いてこそ、本質が見えてきます。

 

 

さて、「シリーズ:ピーターラビットの世界」ということなので次回は作者であるビアトリクス・ポターに焦点を当ててブログを書いてみたいと思います。実はこの人、湘南学園が目指す教育「ESD」すなわち「持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育」の申し子であるかのような人生を送っているのです。次回はESDの視点からピーターラビットの世界を語っていきたいと思います。