第193回 元気と展望をくれる1冊の本(2)

2011年2月17日

玄田教授は、中学や高校へ時々講演に行かれます。実は本校へも一度来園して頂きました。現在の高3諸君が中3の時代に、将来どのように自分の仕事や進路 を選んだらいいか、心に残る講演をして下さいました。『14歳の仕事道』という先生の画期的な本が注目を集め、私も読んで強く共感しました。

それではこの『希望のつくり方』の中から、玄田先生のポイントなる論点や主張について、具体的に順を追って紹介してみます。

日本の将来を考えるとき、若い世代、未来に生きる世代が希望を持てることが何より大事であり、そのためにも先に生きてきた世代が自分自身の体験や人生を、正直に赤裸々に話すことがとても大切だと記されています。
「ひきこもり」の会との関わりで、親御さんの表情がおだやかになって前向きに生活する様子が伝わると、子どもに良い変化が生まれることが多いことを知る 話があります。先を生きる世代が希望を持って生きていく姿を示すことが大切であり、希望は人から人へと伝播するものだと指摘されています。

「ニート」や「ひきこもり」を取り巻く周囲に欠けている言葉として、先生は「大丈夫」のメッセージに注目します。周りの人が的確に「大丈夫」の言葉を投 げかけていくことが重要で、お互いに「大丈夫」の言葉を掛け合える状況の生まれることが希望の持てる社会に必要だと指摘されます。・・・・・・この部分で 私には、名曲『手紙~拝啓十五の君へ』にこめたアンジェラ・アキの強い励ましが想起されました。一方で安易な「頑張れ」という言葉の乱用を慎む必要が指摘 されています。

玄田先生は、「希望」の定義について次のように提示しています。

Hope is a Wish for Something to Come True by Action. または
Social Hope is a Wish for Something to Come True by Action with Others.

希望を構成するのは「気持ち(wish)」「何か(something)」「実現(come true)」「行動(action)」という4つの柱であると説明されます。希望は一人ひとりの問題から、周囲や地域の人達によって「共有」されること で、社会的な希望となり、拡がりを持てるものだとも説明されます。

日本人の「希望」は、圧倒的に「仕事」にまつわる希望が中心となる傾向が強いことが提示されます。製造業中心からサービス業中心への産業構造の変化も希 望のありように影響を与えましたが、職場に「成果主義」も浸透する中で、多くの人びとが仕事における生き甲斐や自信を失いました。
また、「年齢」「収入」「健康」といった要因が希望の有無には影響を与えますが、日本が一気に迎えた高齢社会の中で、未来の希望実現に向けた「可能性」 を閉ざされると感じる人びとが激増します。「バブル崩壊」「失われた十年」「リーマン・ショック」を経て、生活の基盤を根こそぎ失う人びとが急増しまし た。グローバル化という大嵐に備えるために雇用、福祉や医療の整備は依然急務であることも指摘されています。

(明日へつづく)