第111回 チリ落盤事故~33人全員の救出に成功!

2010年10月15日

救出作業は、驚くほど順調に進行しました。救出のペースは予想より大幅にアップして、後半は一人当たり20分余で救出を進められたのです。
昨日の午前10時頃には、全員の救出が達成されました。肺炎や歯の感染症にかかった人もいましたが、作業員の皆さんの健康状態は奇跡的なほど良好だったようです。歓喜につつまれる現場の情景は本当に感動的なものでした。

おととい朝の始業式は、救出作業がもうすぐ始まるという時点で行われました。まとまった形でこの事を伝えられる幸運を感じながら、心をこめてお話しまし た。全校生徒の皆さんは、これまでの経過や数々の感動的なドラマや様々なサポートの話を真剣に聞いてくれました。・・・・・・その夜のニュースはもちろ ん、チリ一色でした。世界各国から報道関係者がコピアポの町に集まり、その感動は国際的に共有されました。

改めて心に残ったポイントを、述べてみたいと思います。
最後の33人目に地上に現れたのは、現場監督のルイス・ウルスア氏(54)でした。全員生還の立役者は彼だったと注目される人です。事故が起きてすぐ、 手分けして現場周囲の地層やトンネルを調査し、「20日間辛抱すれば救出の掘削が我々に届く可能性がある」と彼は判断しました。「48時間おきにスプーン 2杯のツナ、そしてミルク1杯。これを守ろう」と提案します。限られた食材から生命線となる食糧配給の規則を決めたのです。地獄の環境下で、泣き出しそう な仲間に「助けは必ず来る。絶対に希望を失うな」と言い続けて、全員が団結して耐え抜く雰囲気を育んだリーダーだったのです。時にはパニックもありけんか もした仲間が彼の元でまとまったそうです。情勢を分析して、本質を認識し、方向を示して呼びかける。この優れたリーダーシップなくして、奇跡は起きなかっ たことでしょう。彼は「他の作業員より先に地上に戻ることを固く拒んだ」そうです。

そして、「家族の絆」こそが、耐え抜く33名の決定的な励みとなりました。妻への想いを送った最年長のマリオ・ゴメス氏(63)は、救出後に「私の人生 は変わった。私は違う人間になったんだ」と自信と誇りに満ちていました。32番目に地上に出たアリエル・ティコナ氏(29)は、この間に生まれた次女の 「エスペランサ(希望)」ちゃんを抱く妻とテレビ電話で対面しました。地上で家族が待っているという希望こそが、圧倒的な支えとなって奇跡は実現したので す。
在日チリ大使館には、700通もの激励の手紙やたくさんの千羽鶴が届けられ、チリ人の方々から、日本の皆さんへの友好のご挨拶も感動的でした。世界各国から、様々な物資援助や技術支援があったことも心温まることでした。

一方チリの全土で、こうした落盤事故が多発し、毎年数多くの犠牲者を出し続けていたという知らせは気になりました。新興国などの「銅」の需要が国際的に 急増し、「生産第1・安全第2」ともいえる状況があり、サンホセ鉱山でも近年犠牲者を出していたそうです。チリの鉱山・救出技術の高さに感心し、「チリ万 歳!」と団結を強めたチリの国民の姿をまぶしく思う一方で、今後の安全対策の強化と雇用への配慮を、同時にしっかり進めて欲しいと願うばかりです。

生徒の皆さんも、ニュースを通じて、ご家族の人たちと会話する機会になったことでしょう。自分の健康と安全にはいっそう気をつけて、自分のご家族の絆にも改めて想いを寄せ、大切にしてほしいと思います。