第860回 高等学校修業式と中学校修卒業式の日

2014年3月22日

本日は、今年度のしめくくりにあたる重要な一日です。

 

始めに高等学校の修業式を実施します。学園歌斉唱、高校1年生および2年生の修業証書授与、皆出席賞授与、校長式辞を行います。また中学・高校ともに部活動関係の受賞者の表彰を行います。
続いて中学校の修卒業式を実施します。学園歌斉唱、中学1年生および2年生の修業証書授与、中学3年生の卒業証書授与、3学年の皆出席賞授与と成績努力賞授与、中3の私立中高連合会賞授与、校長式辞を行います。

また、午後1時からは「学年末4部合同発表会」が行われます。学内で春季発表会を行ったクラブが中心で、合唱部、演劇部、ダンス部、軽音楽部が、この順で約1時間ずつ公演を行います。在校生はもちろん卒業生や保護者、一般の方々に広く公開されるので、大勢の方々に鑑賞していただきたいです。詳しくはHPの「お知らせ」をご覧下さい。

 

中学も高校も、各クラスは本日が最終日となります。一年間同じ教室で生活してきた級友とひとまずはここでお別れとなります。
担任の先生からはこの一年間を振り返っての思いやまとめが語られ、来年度へ向けてのメッセージが送られます。中学3年のクラスでは更に特別の思いが寄せられます。大多数の諸君が学園高校へ内部進学しますが、新しい進路へ旅立つことになる諸君もいます。ここまで築いてきた友達との絆を今後も大切にしてほしいものです。
成績データや学年・学級の通信、連絡の配布物などが渡されます。春休みの宿題もそれなりに指示されることでしょう。春休みは解放感に恵まれたすてきな時期です。でもボーッとしていれば「光陰矢のごとし」です。貴重な日々を大切にしたいものです。この一年間を振り返り、様々な教材やテスト・プリント類を復習&整理し、次年度へ向けて「助走」の勉学にも努めることが求められます。

 

最後に校長からの話を、今回は中学校の方で代表して紹介させて頂きます。

【中学校修卒業式】皆さん、おはようございます。
今日で学校生活はひとくぎりを迎え、来月からの新年度までひと休みになります。
今年の冬は、寒い日が長くて、大雪に苦しみました。
やっと春本番になり、一気に暖かい日が増えてきています。
日本中どこでも、桜の開花を楽しみに過ごす季節になります。
皆さんも、ご家族や友達とお花見の機会に恵まれればいいなと思います。
 
さて、東日本大震災から、もう三年以上が経ちました。
皆さんは、被災地がいまどんな状況にあるのか、様々な報道に時々は目を向けているでしょうか。今日は、私が最近一番感動したあるテレビ番組をもとにしてお話をしたいと思います。「無人の町の“じじい部隊”」というドキュメンタリー番組です。
福島第一原発のある場所をご存じですか。福島県の大熊町と双葉町という所です。
今でも町のほとんどが「帰還困難区域」に指定され、フェンスで封鎖されています。住民の皆さんは、わが家に戻れずに各地に避難を強いられています。その大熊町で大変な努力が続けられていました。

原発からたった9キロの地点に「坂下ダム」というダムがあります。原発に冷却水を送るために作られた人造湖で、そのほとりに昨年、町は現地事務所を設けました。

そこに避難先から防護服に着替えて出勤し、日中そこに駐在する人達が6名います。平均年齢は約60歳で、自分達のことを「じじい部隊」と呼んでいます。町役場を定年退職した元幹部の偉かった人達が中心です。
「このままでは誰も戻らなくなる」という心配・焦りから、無人の町となった故郷を必ず復興させようと集まった方々です。放射線の問題から若い職員には頼めないと退職後に志願されました。そのお一人の実家は原発からわずか300mの所にありました。先祖代々受け継いできた土地と家を見捨てられない、と実家をいまも時々確認に行かれています。
じじい部隊は毎日「帰還困難区域」を軽トラックで巡回します。道をふさぐ倒木をチェーンソーで切り分けたり、住宅街を這いずるマムシなどをスコップで退治したり、町全体をパトロールするのです。監視カメラをつけると、夜の町にはイノシシなど野生動物が徘徊しています。荒れ放題の町をみたら住民も帰る気がしなくなると、帰還に備えてパトロールを続けます。無人の町の火事に備えて、消防車の練習までしています。

更に重要な仕事は、大熊町の全域でポイントを定めて、定期的に放射線量を測定し、線量の下がった南西部を中心に、町の復興プランの原案を作ることでした。
「大川原地区」という平地でまず除染を進めて拠点とし、除染範囲を徐々に広げ、20~30年をかけて中心部も住めるようにするという遠大な計画を立てました。ある場所には農地をつくり、米と野菜を試験的に栽培し始めました。町の希望の象徴として毎日水やりを続けるのです。国から環境省の職員もやって来て、この地区の表面の土を一斉に削り取る大規模な除染が始まりました。
じじい部隊は、線量の高い「帰還困難区域」でも国の除染作業を引き出そうとアイデアを出します。ゲートの内側の墓地で例外的な除染を認めさせたのです。住民が一時帰宅するときお墓参りができれば、故郷への気持ちをつなぐことができると考えました。実際住民も、避難先から次々とお墓参りにやって来るようになりました。
しかし、住民を不安にさせるニュースが襲ってきます。高濃度の汚染水がタンクから漏れ出したのです。その後、汚染水タンクは増え続けました。
原発に近いわき水の検査結果は基準を下回りほっとしました。しかしダムから原発に送る水がどこかで漏れ、地下に流れているのではないかと東京電力に調査協力を求めます。近くの川をのぼるシャケを捕って調べましたが、シャケもイクラもセシウムは検出されず、近所で取れる果物も大丈夫でした。しかし山林で取ったキノコは基準値を大きく超えてがっかりさせられました。

重点地区の除染が進み、農地の線量も5分の1まで下がりましたが、「もう町には戻らない」という人は7割近くまで増えました。更に大きな計画が追い打ちをかけます。国が原発周辺の広大な土地を国有化し、そこに原発関係の「中間貯蔵施設」を建設するというのです。地元には「寝耳に水」の新たな計画でした。
それでもじじい部隊の人たちは、負けない気持ちで向かいます。「子育て世代」の住民が離れていく気持ちはわかるけど、帰りたいと願う住民からは町の留守番を任せられている。自分達は故郷を守る側にずっといたいと決意し、町の復興プランの中間報告をまとめました。住民の帰還時期を示し、廃炉も含めた今後の仕事で働く人たちも住める町として居住ゾーンを拡大する、町の中心部まで住宅も緑も商店街も復活させるという壮大な計画です。その希望を強く掲げて、じじい部隊は今も無人の町を守り続けています。

 

長くなりましたが、ぜひ紹介したい同じ時代の現実でした。
じじい部隊は、還暦を過ぎた年配の世代が中心です。もう職場から引退して余生をゆっくり過ごしてもいいのに、あえてまだ危険な地域で自分達の使命を果たそうとされていることに、心をうたれました。
「使命」という言葉は、英語では「ミッション」と言います。
じじい部隊の人達は、この世の中で「自分達だけの役割」を自覚して全力を尽くしておられます。仕事でも人生でも大事なことは、自分の使命をどう自覚し、世の中にどのように貢献していくのかということだ、と教えてくれます。
「ミッション」という言葉は「与えられた人生において、自分のためだけでなく、世の中のために何か大きなことを成し遂げようとする決意である」と定義されるでしょう。
じじい部隊の人達は、自分達の「ミッション」を共有されているから、日々の仕事は生命にも関わるほど過酷なのに、明るく朗らかで笑顔を絶やしていませんでした。

 

 

さて、湘南学園中高が「ユネスコスクール」への加盟を正式に認められたことは、中学入試明けの朝礼でも紹介しました。グラウンド前にそのアピールも兼ねて横断幕が掲げられたことにもう気づいたことでしょう。
そこには“持続可能な社会の担い手を育てる”と記されています。
人類と地球はいま困難な課題を数多くかかえていますが、その危機は身近な社会や日本の各地にも様々な形で現れています。
皆さんは将来どこかで、仕事や暮らしの中でその改善や解決に関わることになるでしょう。その時にきっと「自分なりの役割」や「ミッション」を自覚し、積極的に行動できる人間になって頂きたいと願うものです。
今日はこの後、通知票やブルーファイルが、各教室でそれぞれに届けられます。
学年順位が上がったとか下がったとかは、もちろん気になることでしょう。
でももっと大事なことは、今年度一年間の振り返りと来年度へ向けての決意です。そしてこの機会に改めて、遠い自分の未来を考えてみることです。
皆さんの将来には、「自分だけの役割」を果たすそれぞれの場所が待っているともいえます。その場所を、チャンスをつかむのは自分自身です。

この春の先輩達も、「自分の願う未来」に近づこうと懸命に努力して、次々と志望校への夢をかなえました。長い浪人生活を経て栄冠をつかんだ先輩達もいます。
一方でこの春は夢をはたせずに、浪人生活を始めた先輩達もいます。

全国競争である大学受験は、中学受験の時よりもずっとハードルの高い厳しい世界です。一方で中学生の皆さんにとって、大学受験という関門はまだ先のことです。
でも時間が経つのは早いものです。勉強と生活のリズムは、本当は中学生の時代に自分なりに確立しておかないといけないものです。高校生になって自覚した時に、目標との距離にショックを受けたり、つかんだ目標を取り下げたりして欲しくありません。この先どこかで自分の夢や目標が決まった時に、「ようし頑張るぞ」と決心を固めて進めるためにも、現在の時間の過ごし方が問われるのです。
皆さんの周囲にも、もう勉強を軌道に乗せている友達や知り合い、先輩などがいることでしょう。どうやって勉強と生活のリズムを築いているのか尋ねてみてはどううでしょう。とても役立つヒントを得られるかもしれません。悩んでいる人は学年や教科の先生にも遠慮なく相談しましょう。

まずはこの貴重な春休みを、どう生かすつもりなのかかが問われます。
この一年間を振り返りながら、教材やプリントをちゃんと自分で整理しましょう。
新しい教科書には名前を書いて、そのページをゆっくりめくってみましょう。
春休みの宿題は、やっつけでなく、本気でていねいに取り組むことが大切です。
4月からの新年度への助走です。一人ひとりの自覚と実行を求めておきます。

 

一年間、学校生活を共にしてきたクラスメイトとも、本日でひとまずお別れです。
新年度のクラス替えへ向けて、不安も期待もあると思いますが、
クラス替えは、学年全体のつながりを広げる大切な機会にもなります。
学年の仲間とのつながりは、これからも様々な体験や交流を経て深まっていくものです。今日は、周囲の人たちにいっぱい声をかけて、さようならをしましょう。
それでは皆さん、充実した春休みを過ごして下さい。
4月に、そしてまたいつか、元気でお会いしましょう。
・・・・・・以上で私の話をおわります。

 

この一年間も校長通信をお読みいただきまして、誠にありがとうございました。また4月の新年度開始に沿って再開したいと存じます。
ご感想やご意見などありましたら、お寄せいただければ幸いです。それでは皆様、初春の日々をどうかお元気でお過ごし下さい。