第1121回 軽井沢・ISAKを視察訪問して ③

2015年6月11日

今日まで三回分で「ISAK教員ワークショップ」の体験をご報告します。

2日目の日曜日は、「パネル・ディスカッション」のラウンドから開幕しました。ISAKでデザイン思考の教育を担当される女性教員、SGH指定校で斬新なアクティブ・ラーニングが注目される都内女子校の教員、そして司会役も務める小林りんさんが担当されました。デザイン思考や創造性を鍛える様々な授業や総合学習の実例が示され、指導上注意すべき観点が説明されました。

同時に学校現場で新しい取り組みに合意を広げて、カリキュラムを築き直していく大変さについても語られました。「教育現場のジレンマ」や「どこから新しい実践に着手して周りの同僚とどう組んで取り組みを広げていくか」といった悩みに参加者がそれぞれ直面することも意識した設定でした。

 

その後全員はあらかじめ予定されたグループに分かれて、各校での取り組みや悩みを存分に出し合い交流する時間が設けられました。昼食をはさんで再び全体会で各分科会の討議の様子が紹介され、指名の発言報告があり、自由な討議が続きました。

SGHの指定校で英語のテーマ学習が複数のスタッフで協力して推進される実例に圧倒されたり、国語や音楽や総合学習でも能動的・協同的な学びに生き生きと取り組む実例に刺激を受けました。「学校行事の指導」にも注目が集まり、生徒達に「物事を大きくデザインして、解決のプロセスを協働で探らせる」大事な教育場面であるとの指摘に多くの人達が肯いていました。

参加者に「この2日間で最大の学びは何でしょう。明日からどのようなアクションを起こされますか」との問いが投げかけられ、最後に学びを総合して深める上で見事な指導になっていました。

 

最後に小林さんからクロージングのご挨拶がありました。教育はいつも理想と現実の厳しい挟間におかれる。でも一人ではくじけがちだが、仲間がいて同志がいるから大丈夫。何より生徒達が挑んで成長する姿に接して励まされるからと語られました。

ISAKは開校したばかりで今は勢いがあるが、在校生を1学年ずつ増やして二年後からは卒業生の進路も含めて厳しい評価に直面する。でもその時々で謙虚に振り返って初志を高く掲げ続けたいと話されました。

アランの言葉「悲観は気分、楽観は意志」を心に刻まれているお話も深く心に残りました。ISAKを全国の地方公立校にもっと知ってもらい、国の教育行政にも皆さんの声や願いを届けていきたい、と広い使命感を語られていました。

最後に、将来の日本では一番憧れの仕事が教師になることを願っている。教えることも学ぶこともわくわく楽しい!と日本中の学校に活気が広がっていくことを願ってこれからも努力していきましょうと呼びかけられ、全員に深い感銘が共有されました。今回出会えた縁を大切にしていこう!と再会を期して終了となりました。

 

小林りんさんの説くリーダー像に改めて注目します。リーダーというと政治家や起業家をイメージするけど、立場や分野に関係なく「新しい価値観を世の中に送り出す人」がリーダーだとされます。そのためには多様性への対応力があり、問題設定能力があり、リスクをとって挑戦できる力がある。そうした資質を持つ人間を育てたいと語られます。ISAKはある国際基準に準拠したプログラムを軸にしてその目標に挑んでいます。

小林さんは「変革する人=チェンジメーカー」という言葉をよく使われます。そのために「困難に直面しても決して挫けない精神力」の大切さを強調されます。小林さんのこれまでの仕事の軌跡そのものに重なる指摘でしょう。民族も宗教も本当に様々な生徒達が寮生活を通じて、多様性への寛容力を身につけていくこともよく理解できました。

週末いっぱいの研修でしたが、疲れを吹きとばす程のはずむ気持ちになり、深く心に残る収穫がありました。これからのグローバル教育の具体化に今回の研修を生かしていきたいと思います。