第422回 広上淳一先生の圧倒的な音楽指導!

2012年3月9日

 学年末試験の最終日です。がんばったぞ!と来週のテスト返却を楽しみに待てるといいものです。

 今日は、ある学園卒業生のご活躍を、先日放映されたNHKの番組を通じてご紹介します。
 広上淳一先生は、日本の音楽クラシック界を牽引する指揮者のお一人です。湘南学園の卒業生であり、若くして国際的な青年指揮者コンクールで優勝され、日本はもちろん欧米のきわめて多数のオーケストラを歴任してこられました。現在も京都市交響楽団の常任指揮者、東京音楽大学指揮科の主任教授を始め様々なお仕事をされ、東西奔走の毎日を過ごしておられます。

 『ドキュメント20min.』という私の大好きな番組でした。「マエストロの白熱教室~指揮者・広上淳一の音楽道場~」という回で、東京音楽大学における指揮者養成の指導がテーマでした。指揮者を志す学生が実際にオーケストラを指揮する合同レッスンの場で、広上先生を始めとする専門の先生達は容赦のない厳しいコメントを浴びせます。時には指揮中の手や体の動きを直接に矯正させる場面もありました。その曲の世界への理解も愛も足らない、それでは楽団員から共感も情熱も引き出せない、ヤマ場も動作が一本調子だ。など激しい叱責や問いかけが寄せられます。“ズタボロ”になり追い詰められながら、その学生は卒業試験の実演へ向けて模索の格闘を続けます。再びスコアやピアノ、自分の全てに向き合い、充電の旅を続けるのです。

 多数の楽器専門家の集まるオーケストラをまとめ、個性や独自性あふれる音楽を創り上げる上で、指揮者には何よりも豊かな人間力や表現力が求められます。番組のレッスン風景は「人間力を鍛える道場」そのものでした。技術的な事よりも、指揮者・音楽家として人間としていまどんな境涯にあるのか、自分をどのように高めていく課題があるのかを自覚させる厳しい人間修行の場でした。その答えはそれぞれが自分で問い、見つけるしかないのです。それでも卒業試験で奮闘したその青年の努力を広上先生や先輩達はねぎらい、大切な今後の目標を示唆していました。

 広上先生の指揮される姿は、そのダイナミックな躍動感や生命力あふれるエネルギーの表出にまず圧倒されます。「類いまれな俊敏さ、劇的な表現力や瞬発力」「一見コミカルにも見える独創的なスタイルから、細部まで引き締まった天才的な響きが生まれる」といった評価をよく目にします。
 広上先生には、御多忙な中、これまで湘南学園の歴代周年記念行事でもご尽力を重ねて戴きました。第九、幻想、1812年、更には在校生のピアノとコラボでショパンの協奏曲など演奏して戴いています。先生のますますのご活躍をお祈りするとともに、先生が渾身の寄り添いで示されていた、本物のプロ・専門家の養成を目指す人間指導のあり方からも学んでいきたいと思いました。