第1371回 歴史に学び、建学の精神を活かした教育的高みを

2018年3月23日

~あるべき歴史社会を想像し創造する気概を~

 1933(昭和8)年に湘南学園は創設され、2018年11月15日には創立85周年を迎えます。湘南学園の創立を構想した地元湘南の有識者、保護者が目指した教育は、初代学園長として招かれた小原国芳先生に白羽の矢を立てられことをみれば明らかです。いわゆる大正デモクラシーの機運が高まるなか、小原先生は大正自由教育の理論家・実践家として「児童中心主義」「活動主義」を展開し、「全人教育」をその理想とし形にして落とし込んだ玉川学園を創設しました。このモデルに共感した有識者、保護者は、ご縁もありここ湘南・鵠沼の地に開設する湘南学園にその理想を託したといってよいでしょう。その理想は幼稚園、小学校のみの小さな学園からの出発でした。
 
 その後、時代の流れは大正自由教育の要件を狭める方向に進み、湘南学園が創設される時は、日本ならず世界において、戦争とファシズムへの傾斜を強めていきました。私学の歴史を紐解いても、この時期の私学人の多くが、国家による私学への統制強化に苦慮しつつ、如何にして、それぞれの建学の精神を基にした理想とすべき教育を体現するか、その苦闘の様が各校史に見て取れます。湘南学園もその私学の1つであったことは言を待ちません。いま改めてこうした私学の先達、とりわけ湘南学園の草創期に関わった関係者の残した資料や、以後その教育を引き継いだ学園関係者の資料とその軌跡から、私たち湘南学園の教職員は何を学ぶべきか、考える時期にきているように思えてならないのです。
 
 考え始めると、「草創期の関係者が、理想として描いた教育とはどのようなものであったのか」「その教育の理想を実現する努力をどのようにしたのか」「教職員が理想として描いた教育実現にむけて、時代的制約が強くなるなかで、どのような教育実践に励んだのか」「湘南学園にお子さんを通わせていた保護者の皆さんは、湘南学園に何を託そうとしたのか」「湘南学園に通い、存命されている”お子さんたち”が、自ら受けた教育をどのように受け止めておいでなのか」「終戦、憲法発布・教育基本法の制定のなかで、湘南学園として、戦前に施した教育を”建学の精神”に照らして、どのように考え、戦後の再出発に臨んだのか」などなど。各学園史の行間をしっかり読み解き、また保存されている資料類にはあるものの記述されていない項目も含めて、深く考えることを通じて新たな学園史像が浮かび上がってもくるのです。
 
 今後新たな教育的高みを湘南学園が目指し、90周年、100周年の教育的検証に耐えられるに真摯な学園づくりの営みが求められるなか、草創期から現在にいたる学園史が抱える「正の遺産」と共に「負の遺産」にも眼を背けず、その教訓から何を学ぶのかを教職員はもとより、学園関係者はそれぞれの立場を超えて、学び、考え、「建学の精神」が開花する新たな方向を模索すべきなのではないでしょうか。それらが果たされてこそ、学園への「信頼」は強くなっていくに違いありません。