第1389回 山本一八先生をご紹介

2018年9月28日

今日は、英語科の山本一八先生をご紹介します。

今年の10月で31歳。教職7年目の英語科の先生です。

「常に教員室前の廊下の長机のところで、生徒に英語の個人指導をしている先生」というイメージがあります。とにかく生徒に寄り添う先生ですね。

以前、山本先生がヴァイオリンで「ふるさと」を弾いて聴かせてくれたことがありました。とてもやさしい音色でした。では、以下、インタビューの内容です。

 

Q:どのようなことから教職に就こうと考えたのですか。

実は、話せば長い話になるのですが、大学入学当初から教職課程は履修しようと考えていました。企業であれ学校であれ誰かに「教えられること」と誰かに「教えること」ことは避けられないと思います。また、私の祖母が、その時代ではなければ師範学校に行きたかったという思いがあり、その祖母が、自分の夢を私に託して、大学の費用を出してくれると言ってくれました。教職に就くとか就かないとかは自分で決めればよいが、教職課程だけは取ってほしいと言われていました。

 

Q:実際に教職についてどのように感じていますか。

教えることの喜びというか、教えることによってむしろ自分自身の知識がどんどんと広がっていくということがあると思いました。実際に教員になってからそういうことを実感したのです。一方で、いろいろな人と出会うことができ、そういうことが喜びとなり、この仕事を続けることができているのではないかとも感じているのです。

湘南学園の生徒諸君を見ていると、人との距離が近いと感じます。一方、自分自身も(以前は)生徒との距離の持ち方などが手探りだったのです。生徒と衝突してしまうことなど、いろいろなこともありましたけれども、生徒との近い距離でやってこれたからこそ、その結果なのかなと思っています。ですから、生徒のみんなと関われたのが良かったのかなと思っています。

 

Q:出身大学や専攻を教えてください。

東京外国語大学 外国語学部 ベトナム語専攻

 

Q:ベトナム語を選んだ理由は何ですか。

もともと映画が好きでした。ベトナム戦争をテーマにした映画をよく観ていたことがあり、「この国はどのような国なのだろうか。」と興味を持ったこと、そしてそもそも中学生のころから英語が好きだったということもあり、語学関係の勉強を専門に取り組んでみたいなという気持ちになったのです。そして、英語、ベトナム語、という両方の目的を考えると、東京外国語大学が自分に合っているのではないかと考えたわけです。

 

Q:ベトナム留学を通じて経験したことはどのようなことですか。

私は、大学3年生を終えてから東京外国語大学を1年間休学して留学ました。今まで3年間学んできたベトナム語を実践し、さらに深めるとともに、留学からしか得られない経験を積みたいという思いが強くありました。また、留学をする直前のころリーマンショックが起こり、就職活動が厳しくなることが予想されたことも留学を後押しする一因になりました。ベトナムでは、日本の空気とはだいぶ違う空気にさらされたのですが、いろいろと自分に影響がありました。特に、ベトナム人特有の楽天的な部分、つまり「なんとかなるさ~」「食べるものと寝るところがあればなんとかなるよ」といった部分からは大きな影響を受けました。ベトナム人は本気になれば大国アメリカを撃退するくらいの力があるのに、めったに本気を出さない。むしろ、本気を出さないことに幸せを感じています。真面目一辺倒で生きづらさを抱えてしまう日本人はこういったことから学ぶことが多い気がします。こうした経験から、自分自身のことや日の環境を相対的に見ることができるようになりました。本当にかけがえのない一年間であったのではないかと思っています。

 

Q:湘南学園でも海外に出たいという学生がだんだんと増えてきていますが、そうした若い世代の人たちにどのようなことを伝えたいですか。

まず、海外に行くとうことは良いだと思っています。時間、やる気、体力、お金の4つのことが揃っていたら、いろいろなことに挑戦できます。しかし、この4つが全部そろうということはめったにないことです。若い時代は、お金以外の3つの条件は自分次第の問題です。家族から金銭的な援助を受けつつ、それでも挑戦すべきです。基本的に、学生時代に世界に目を向けていくことは良いことなのではないかと思います。世界を見ることによって日本を相対化できると思います。

ただ、私としては、若者が世界を見てきて、それを「良い」とか「悪い」で判断して欲しくないと思っています。「こういう考え方もあるのだ」というように受け止めて、認めるという態度が大切なのではないかと思います。もちろん中には、本当に認められないようなことはあるのかもしれませんが、認められることは認めるという姿勢が大切なのだと思います。

 

Q:湘南学園生をどのように思いますか。

優しい子が多いですね。生徒諸君の様子を見ていると、お互いのことを認め合っているのだなと思える場面がよくあります。私といえば、自分自身の個性もあり、学生時代はやりづらさや生きづらさを感じることがありました。しかし、湘南学園の生徒たちの様子を見ていると、こまかい一人ひとりの個性などに、周囲が過剰に介入してこないなど、本当にいいなと思っているのです。もちろん人との相性はあるのでしょうが、「自分は合わないのだが、彼には良いところがある」という言葉が出てくるのです。これは端的にこの学校の生徒の素晴らしさなのではないかと思っています。

 

Q:よく生徒に一対一で指導をしていますね。

こうしてせっかく湘南学園に入学してきてくれた生徒の中には、英語を勉強する上で苦手を抱えてしまうということがあります。英語を学習することに重たさを感じ始めてしまったのに、その生徒は毎日英語の学習を続けていかなければならないわけです。そのような時に、やるせないなという気持ちになっていると思うのです。そうした時に少しでも寄り添って、英語の学習を続けてもらえたらなという気持ちで、ほそぼそと始めたというのがきっかけです。

学生時代の私は、数学で苦手だという悩みを抱えていました。当時の私の担任の先生が40人のクラスという大所帯の中でも「君は、ここができていないから、こういう問題に躓いているのではないですか。」と適確にアドバイスをしださり、私の愚痴みたいなことまでも、時間をつくって聞いてくれたということがあったのです。学生時代に先生にしてもらってよかったことを、今度は私の生徒にしてあげたいと思うのです。

教師の側からすると受け持ちの生徒は、one of them(大勢の中の一人)になってしまうのだけれど、生徒からすれば担任や教科担当者はonly you(かけがえのないあなた)です。これが現実だとしても、このギャップを埋めたいという気持ちがあるのです。

 

Q:目標や夢、理想はどのようなことですか。

生徒と一緒に世界を広げていきたいですね。英語を学ぶということはどのようなことなのかを考えたときに、もちろん英語が話せるようになることも重要なことだと思うのですが、英語を学ぶことによって知らなかったことに目を向けていくようになる。そういうことの方が実は重要なのではないかと私は思います。教職に就いた当初は、英語を教えることで精一杯でした。でもこれからは、語学を通じて生徒一人ひとりが広い視野を持てるように手伝っていきたいのです。もちろん私自身も頑張っていきたいですね。

 

Q:山本先生にとって音楽とはどのようなものですか。

生活に彩を与えてくれるもの。音楽のない世界というのは自分にとっては白黒の世界のようなものです。英語で話をしたりする際にも、細かなところは伝えられなかったりすることがあるものですが、その点、音楽というのは、母語が何語であろうと、どのような背景を持っていたとしても、性別や宗教など何も関係なく、いろいろな人が共有できる文化であり、財産なのではないかと思うのです。

 

Q:吹奏楽部の部員諸君へメッセージを。

音楽とは「音を楽しむ」と書くように、素直に音を楽しんでほしいなと思います。自分自身が音を楽しんでいればきっと聞く人を楽しい気持ちにさせることができると思いますね。