第582回 大震災を経て~生命の大切さ、家族と地域の絆を改めて学ぶ

2012年12月7日

 後期中間試験は本日、高校が最終日です。中学は昨日終了しており、本日は「中学道徳時間」であり、今回は映画上映会を行います。

 10月に公開された新しい映画です。『生き抜く 南三陸町 人々の一年』・・・・・・東日本大震災で甚大な被害の出た宮城県南三陸町を1年間にわたって取材し、被災された住民の様々な素顔と、生と死が混在し続けた被災地のその後を見つめ続けた、100分間にわたる長編のドキュメンタリーです。

 取材チームは、大阪から28時間かけて被災直後の現地に入りました。何もかもが破壊された町の姿はあまりにも衝撃的でした。漁網が絡まった家の残骸、路上で転覆した船、四方八方に散乱した車・・・・・・その中で懸命に働いている人びとにマイクとレンズを向けました。生き残った住民は肉親の安否を確かめようと奔走し、自衛隊員は行方不明者を捜索しながら写真や記念品を丁寧に拾い上げます。取材チームは次第に、記録とは冷徹な傍観者の行為ではなく、寄り添い続けることだと体感し、町民それぞれの生き抜く素顔をパラレルで追い始めたのです。
 最愛の妻を亡くした男性が、隣町に移り住んで幼い子ども達を育てている姿。避難所でのストレスと孤独に悩む女性が、せめて住み慣れた集落に住みたいとの一念で仮設住宅の抽選に望みをかける姿。いち早く仕事を再開した漁師が、行方不明の一人娘を捜すため網を投げ入れる一方、娘の職場の前で感情を爆発させる姿。町の防災担当だった夫を失った女性が、骨組みだけ残る防災対策庁舎を毎日訪れてひっそりと泣き崩れる姿。映画は、南三陸町の被災後一年間の厳然たる現実を克明に描いていきます。
 取材班が撮り続けた800時間もの膨大な映像を凝縮した作品です。映画化にあたり「音」の組み込みにも注意し、ナレーションも一切入れずにリアリティーの現出を徹底しています。被災地の人びとを淡々と映し出すからこそ、そこで「生き抜く」姿が見る者に迫ってきます。

 この「中学道徳時間」ではここ数回、東日本大震災を受けて厳しい救援活動へ赴かれた方々、現地の防災や復興の取り組みで奔走された方々などをわが校へお呼びして、貴重な講演をしていただきました。
 今回は、被災現地に密着取材して制作された貴重な映画の上映を通じて、改めて生命のいとおしさや、家族と地域の絆のかけがえのなさについて、生徒達に深く伝えていければと強く願っています。