第753回 東京の都心で暮らした想い出から

2013年10月11日

行き帰りの通学路や電車の中で、高校3年生と一緒になることがよくあります。大学受験へ向けて、追い込みの大事な数か月です。それぞれの第一志望校や志望学部の系統などたずねてみると、けっこう具体的に教えてくれます。

自宅からそのキャンパスまで通学できるかどうかが話題になることもあります。神奈川県内のこともありますが、東京都内のどこかにあこがれのキャンパスがあることがやはり多いようです。下宿予定の人はごくわずかです。JRと私鉄の乗り換えなど予想ルートを聞いていると、朝の渋滞が気の毒に思うこともあり、その所在地で知っていることもあります。

 

自分は、小6の途中から中1になる直前まで、都内の台東区で暮らしました。上野と浅草の間の入谷という場所です。「鬼子母神」と「朝顔市」が有名で、家具のお店が多い街でした。小学校の校庭はとても狭くてコンクリートでした。典型的な下町で、人口密度が高くて「長屋」の多いのが独特でした。お隣同士のプライバシーなど保証しきれない風情がありました。週末に上野の「アメヤ横町」によく買い物に行くのを楽しみにしていました。
小6の始めまで信州で育ったので、一家上京の時にはドキドキしました。上野駅そばのお店で初めての「バイキング料理」に舞い上がったこと。池袋駅前の巨大百貨店のデパ地下で“試食めぐり”を楽しんだこと。田舎者の少年にとって“東京ってすごい!”と一番感じたのはそうした食の体験でした。

 

 

大学を卒業後まず都心の出版社に就職しました。書店と食堂がひしめく神保町~御茶の水に職場があり、昼どきにどこでランチを取るかが日々の一大事であり楽しみでした。サラリーマンや学生が多いので食堂間の激戦がすごく、安くて美味しい名店に恵まれました。二年も経たずに教員に転職したので、この都心の時代も短いものでした。

 

高3諸君は、卒業後は首都圏近郊や全国各地へ、各自が選んだ進学先へ旅立っていきます。一定の年月を過ごすそれぞれの地で、様々な人びとの出会いがあり、現地の食や街に馴染んでいくことでしょう。
やはり都内の大学への進学者が多数になると思われますが、オリンピック開催という目標ができた東京都の各地で、多彩な出会いと楽しみに恵まれることを願っています。

 

※    今日の写真は、上が代々木公園、下が東京駅です。