第289回 「自然の復元」にトライする理科研究部

2011年7月12日

 今日は、ある文化部が進めている、地道ながら貴重な取り組みについて、ご紹介します。
 「えのぽ 江の島・藤沢ポータルサイト」という、この湘南地域の様々なニュースを紹介する、ステキなインターネットのサイトがあります。その「藤沢マイタウン」のコーナーに、「海岸植物育成に取り組む湘南学園の生徒たち」の特集がありました。主役は、学園中高の理科研究部の皆さんです。

 湘南海岸の鵠沼・辻堂・茅ヶ崎の砂浜には、たくさんの「砂草」が長く自生していました。「ハマボウフウ」「ハマヒルガオ」「コウボウムギ」などが豊かな情景をつくってきたそうです。ところが近年では、海岸や沿線道路の開発で、そうした植物が絶滅の危機に瀕しているそうです。「自然の復元」は周辺の近隣住民の願いになっています。
 そこで本校の理科研究部の生徒達は、部活動の一環として。顧問の横山先生の指導のもとで「ハマボウフウチーム」を結成し、「砂草里親100人プロジェクト」を進める「NPO法人ゆい」の方々のご協力を得て、ハマボウフウを自然に還す取り組みを始めています。
 種まきから発根・発芽・成育・海岸への移植までのプロセスを進める中で、3月の降雪・低温や大震災と計画停電などいろいろな困難に直面しました。それを乗り越えて、今では海砂の9cmポットに元気な葉を開かせているそうです。登校出来ない日には成育用のポリポットを自宅に持ち帰って世話をする部員もいたとのことです。「湘南の海岸を緑豊かに」との生徒達の想いは、理科研究という部活動の中でしっかり展開されているのです。

 本校の理科研究部は、自然を観察し探究する様々なフィールドワークを、休日に何回か実施しています。さらに夏合宿では、「生物多様性の保全」をテーマとする本格的な野外学習を行っています。
 「赤谷の森」は、群馬県と新潟県の県境にある広大な国有林域で、利根川の上流域にあり、首都圏の水源にもあたる地域です。ここでは、行政、地域住民、NGO、ボランティアなど広範な人びとが生物多様性の保全を目的とした調査、活動を進めています。
 理科研究部は、この「赤谷の森」に昨年度夏合宿から関わりました。今回はセンサーカメラを活用した調査や、四季を通じた自然の変化と自然再生試験(森林・渓流環境)の経年変化の観察による、多角的な生物多様性教育に取り組みます。ある法人が募集する中高生対象の科学部活動振興事業にも採択された取り組みです。

 「生物多様性の保全・復元」は、国際的な地球環境問題としてきわめて重視されている課題です。理科研究部の皆さんが、貴重な校外の体験学習を通して、専門的な知見や問題意識を更に豊かにしていくことを、大いに期待しています。